小池百合子知事が、11月7日に予定していた築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転延期を正式表明した31日、築地市場で働く人々や訪れた観光客らからさまざまな反応があった。築地市場は巨大流通市場であると同時に一大観光地でもあるため、飲食店を訪れる観光客からは移転に懐疑的な声が聞かれ、移転準備を進めている飲食店の関係者からも当惑の声が広がった。
外国人観光客によるマグロ卸売場の見学とともに、同市場の目玉となっているのが「魚がし横丁」とよばれる飲食店や雑貨店が約140店集まった一角。市場で働く人が食事をする場所として発足したが、早朝には観光客が、昼時には会社員が大勢訪れる。
昼食時にすし店を訪れた新宿区の会社役員、有澤めぐみさん(56)は「魚卸で働く人たちは移転を望む人もいるだろうが、グルメ巡りに訪れる人にとって地下鉄2線が通る築地に比べ、豊洲市場は圧倒的に交通利便が悪い」とする。
埼玉県から友人と訪れたパート、小野きよみさん(54)は「埼玉からでは副都心線と大江戸線でアクセスできる築地に残ってくれた方がありがたい」と話す。グルメ目的の観光客は、交通の利便性から移転否定派が多数だった。
同横丁はすし店を中心に外国人にも人気だ。海外のフィッシュマーケットを見たことがあるという中国籍の建築事務所経営、程思紅さん(40)は「市場で働く人と、情緒がある飲食店を訪れる観光客が、相乗効果で活気を生む築地のような場所は世界でも珍しいので、今の場所に残ってほしい」と指摘。
魚がし横丁の飲食店は大半が豊洲に移転することを決定し、既に準備を進めている。飲食店で働く岩田美佐絵さん(65)は「豊洲市場に移る計画で既に内装工事を始めている。9月までに終わらせてくれといわれたので急ピッチでやっているが延期とは……」と当惑を隠さず、「情緒ある築地市場が続いてほしいという気持ちはある」とも明かした。
■矢田美英中央区長のコメント「築地市場とは別に区内に『築地魚河岸』を近く開業する予定であり、今回の移転問題とは関係なく、食文化の拠点としてこれからも観光面でも発展させる方針。築地のにぎわいと活気を永遠に守ってまいる」
■山崎孝明江東区長のコメント「築地市場を豊洲地区に受け入れることに関して都区間で、協議を行ってきた。しかし、移転時期延期の方針転換については都から事前相談などがないまま、一方的に公表されたことは極めて遺憾。都には誠意のある対応を求める」
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