【サンパウロ=宮本英威】ブラジル上院は31日午後(日本時間9月1日未明)、国家会計の不正操作に関わったとされるルセフ大統領を被告とする弾劾裁判の採決を実施し、賛成多数で有罪と判断して罷免、ルセフ氏は失職した。現在職務を代行するテメル副大統領が近く正式に昇格する。ただ政治混乱は続く見込みで、ブラジル経済が早期に回復に向かうには時間がかかりそうだ。
上院全81議員のうち、有罪が61票、無罪が20票だった。規定の3分の2以上を満たした。議長は最高裁長官が務めた。ルセフ氏は国家会計の状況を良好に見せるため、農業融資などを国営銀行に肩代わりさせたと認定され、失職に値すると判断された。
後任のテメル氏はルセフ氏の残りの任期である2018年末まで大統領を務める。テメル氏は中道のブラジル民主運動党(PMDB)に所属するベテラン政治家。同党はルセフ氏が所属する労働党と連立を組んでいたが、今年3月に離脱して弾劾成立の流れをつくった。テメル氏は税制や社会保障の改革を進める意向を示している。
失職したルセフ氏は、軍政期には反政府ゲリラとして活動した経験を持つ。前のルラ政権で鉱業・エネルギー相、官房長官を務めた。ルラ氏から後継指名を受けて10年の選挙で勝利し、11年1月にブラジル初の女性大統領に就任した。15年1月から2期目を務めていたが、同年末から議会で弾劾手続きが始まり、今年5月からは職務停止中だった。