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山田厚史の「世界かわら版」

国債バブル崩壊で日本は再び外資ファンドの餌食になるのか

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
2016年9月1日
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 富山県の限界集落・利賀村(とがむら)で演出家・鈴木忠志が主宰する国際演劇祭が9月4日まで開かれている。代表作「世界の果てからこんにちは」は、精神病院で患者が求める要求を院長がはねつけるという設定で舞台が回る。患者の言い分は真っ当だが、権威が真実を押しのける「倒錯の世界」から現代を照射するこの作品は初演が1991年。バブル経済の頂点で「ああ日本が消えてゆく」と今日の衰退を予言したかのような演劇だ。

 米国ワイオミング州の保養地ジャクソンホールでは世界の金融を仕切る賢者が集まった。「世界の果てまで」お札を撒いて経済を元気にしようという人々の会合だ。米国でリーマンショック、欧州では債務危機、中国の高成長にブレーキが掛かり、日本はデフレに沈んだまま。いずれの国も特効薬として期待するのが金融緩和。傷口にじゃぶじゃぶカネを注ぎ込む。大概のことはカネが解決する、というのが今や世界の趨勢だ。

 「演劇は世直しのため」という鈴木は「カネでは解決しない。人の本性を大事にしろ」と叫んでいるように見えた。「正常」なのは果たしてどちらなのか。

先進国の実態はどこも低成長
マネー依存症に陥った世界経済

 ジャクソンホールに集まる中央銀行の要人に注目が集まるのは、彼らは「金融資産を膨らます力」を持っているからだ。金融緩和という魔法の杖である。

 イエレンFRB議長は講演で「雇用が改善し、追加利上げの条件は整った」と踏み込んで市場を驚かせた。

 FRBは昨年12月、0.25%の利上げに踏み切り、ゼロ金利政策を解除した。市場は更に4回ほどの利上げが2016年中にある、と受け止めたが、まだ1回も行われていない。利上げすればドル高に振れ輸出にブレーキが掛かる。引き締めを恐れ株価は下落しかねない。慎重だったイエレン議長が「条件は整った」と発言したことで、ソウルにいた麻生財務相まで「いよいよ9月か12月にやらざるを得ない」と反応したほどだ。

 わずか0.25%の利上げに、なぜ世界が注目するのか。アメリカ中央銀行のちょっとしたサジ加減が世界を駆けまわるマネーの動きに影響するからである。

 世界はモノ作りやサービスなど実物経済の他に、株や預金のマネー経済がそびえ立ち、日々肥大化している。金融資本主義は先進国を席巻し、市場で取引される金融商品の値段に人々は一喜一憂し、政府は株価対策が重要な仕事になった。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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