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【国際】

被爆地の学生、ドイツの戦争遺跡を訪問 「負の歴史を伝える意識が強い」

ヒトラー暗殺を計画して銃殺刑となったドイツ国防軍の将校をたたえる記念碑を見学する川田さん(左)と河野さん=31日(垣見洋樹撮影)

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 【ベルリン=垣見洋樹】日本と同じ第二次大戦の敗戦国ドイツは負の歴史とどのように向き合っているのか−。被爆地の広島、長崎の学生が三十、三十一日、自国の加害行為を展示するベルリン市内の戦争遺跡を回り、記憶継承の実情を学んだ。

 世界的に知られるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートホールの脇に、人種的優生思想を唱えるナチスが何万人という障害者を安楽死させたことを示す記念碑と展示がある。

 「街の真ん中に負の遺産が残してある。後世に歴史を伝える意識の強さを感じる」。世界の核兵器の現状を学ぶ若者グループ「ナガサキ・ユース代表団」に加わる長崎大四年の河野早杜(はやと)さん(23)は、自国民による残酷な行為を隠さず示した展示を食い入るように眺めた。

 昨年、米ニューヨークの国連本部であった核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に派遣され、非政府組織(NGO)会合で日本の歴史教育の現状を発表。長崎県人でも、現在の核保有国や核弾頭数をよく知らない現実にもどかしさを感じ、ドイツの取り組みを学びに来た。

 ドイツで平和活動に取り組む若者と対話し「歴史をよく知っていて、自分の意見も持っている。教育や身近にある歴史遺跡の効果でしょう」と語った。

 祖父が被爆者の広島市立大四年の川田亜美さん(21)は被爆地の歴史を伝えるサークルに所属。昨年、オランダのアンネ・フランクの隠れ家で、戦争の加害国側のオーストリア青年のボランティアと出会い、戦争遺跡が加害国側と被害国側の交流の場になると実感した。「アジアの戦争遺跡も中国、韓国の若者とともに学ぶ交流の場にできるのではないか」と語った。河野さんは卒業を控え「学んだことを後輩に伝え、平和活動の継承、拡大に役立てたい」と語った。

 

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