今、NHKが放送した貧困女子高生についての議論が話題になっています。
知らない人のために、ちょっとだけ説明させてください。
事の発端は、こちらの記事を読むと、よく解ります。動画もあるので、ちょっと観てみてください↓
NHKが特集した貧困特集に登場した女子高生の「うらら」さんについて、実はお金には全く困っていないのではないかと囁かれ始めた。当の本人が豪遊している証拠をネット上にたくさんアップしていた。
この件に関しては、プロブロガーのイケダハヤトさん、NPO法人ほっとプラスの藤田さん、NPO法人自立サポートセンターもやいの大西さん、社会活動家の湯浅さん、ライター・作家の雨宮処凛さん、みわよしこさんなどがしっかりと意見を書かれています。
貧乏人は、お金の使い方を知らないから貧乏なのです。 : まだ東京で消耗してるの?
貧困の基準はどこにある?――「貧困女子高生」報道から考える - 大西連 / NPO法人自立生活サポートセンター・もやい (1/2)
「貧困女子高生」バッシングの無知と恥〜「ニッポンの貧困」の真実(大西 連) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160830/biz/00m/010/005000c
衣食住ある貧困 どこまで許容(2016年8月31日(水)掲載) - Yahoo!ニュース
「非の打ち所のない貧しい人」ってどこにいるの? 〜高校生バッシング、もういい加減やめませんか〜の巻-雨宮処凛がゆく! | マガジン9
「貧困女子高生」問題に関する私見(みわよしこ) - 個人 - Yahoo!ニュース
どれも専門家ならではの鋭い意見が書かれているので、ぜひ、時間がある時に、読んで頂きたいと思います
で、こんなにもたくさんの有名ブロガーや作家・ライター、NPO関係者が声をあげてくれているので、僕はこの件について書かないでおこうと思っていました。
やはり、話題の中心にいる女子高生の生活に関わってくる事なので、むやみに盛り上げないほうがいいと判断したんです。
でもね、でもですよ、ツイッターとかネットを見てると、目に入って来るんですよ、その女子高生に対する中傷が。
もうね、その中傷がだんだんムカついて来たので、結局、書かせて頂きます。
まずは、上記に紹介した記事のほとんどに書かれている『絶対的貧困』と『相対的貧困』について、ご説明しましょう
まずは、これを理解しようとする事が最初のステップです
『絶対的貧困』と『相対的貧困』とは?
女子高校生は貧困状態にあるのか?ないのか?
この質問に対する正解と言える答えはあるのでしょうか?
作家のみわよしこ さんが解りやすく説明してくれています
「絶対的貧困状態にはないが、相対的貧困状態にある」が正解でしょう。
話題になった女子高校生のケースでは、主に問題になっているのは
「食うか食えないかという貧困ではないけれども、友人づきあいで『同じことを同じ回数は無理』が数多くあり、進路選択など多くの費用が必要な場面では、家庭の経済状況による制約が、どうしようもなく加えられる」
という相対的貧困です。
「食うや食わずや」、生死が問題になるような「絶対的貧困(1人1日1.9ドル以下での生活(2015年、世界銀行による)」ではありません。
「貧困ではない」の証拠とされた「友人たちとのランチ」「チケットのコンサート」「高価なペン(のセット)」といったものがスポット的に存在することが、まだ彼女の状況を相対的貧困の範囲に押しあげています。
それも不可能な状況になったら、バッシングした人々も、彼女を「貧困」と認めるのでしょう。
どうでしょうか?さらに、簡単に言うと、こういうこと。
食料がない、家がない=絶対的貧困
周囲の人達が出来ている事が出来ない=相対的貧困
また、アニメの専門学校を金銭的な理由で諦めている、クーラーはなく、PCも買えない、などを考えてみると、間違いなく彼女は相対的貧困なわけです。
ここまで読んで、「そっか、「絶対的貧困状態にはないが、相対的貧困状態にある」という事なのかぁ~、どちらにしても貧困なんだから、簡単にバッシングするべきじゃないなぁ~」と、思った人は、次は読まなくてもいい。
でも、「納得できない、やっぱり、趣味にお金を使っている時点で、貧困じゃないでしょ?」と言う人は、ぜひ次も読んでほしい。
そんなふうに、考えてしまう事が、どれだけ危険な事なのか説明します
一億総貧困予備軍の時代
僕は、貧困をテーマに、このブログ、脱貧困ブログを運営して来ました。
なので、ふだん脱貧困ブログを読んでいる僕の友人から連絡が来て、今回のNHKの貧困女子高生について、こんなふうに質問されました。
「あの女子高生って、本当に貧困なの?」
この質問について、僕はこう返しました。
「彼女は貧困予備軍だと思う、僕が心配しているのは今回のバッシングで、趣味にお金を使う事すらも出来ないガチの貧困状態になってしまうのを心配しているんだよね」
どういう事か?解りますか?
僕は、あえて、絶対的貧困と相対的貧困を言葉に出さないで、絶対的貧困を貧困と呼び、相対的貧困を貧困予備軍と呼んでみたんです。
こうすると、人に話す時に、解りやすくなります。この解釈は、専門家の方は、きっと嫌がるでしょう。
でも、今回の本質をよく説明できるので、上記のような貧困予備軍という言葉を使っているんですよ
ちょっと考えてみてください。
あのNHKの番組で紹介された女子高生を貧困予備軍だとすると、何がきっかけでガチの貧困状態になってしまうか解りません。なぜなら、予備軍だからです。
たとえば、今回のバッシング。今回のバッシングで散々、叩かれた彼女は、もしかしたら、不登校になってしまうかもしれない。
最悪、うつ状態になってしまう可能性だってあります。
また、うつ状態になってしまうのは、女子高生だけではありません。
彼女の母親や姉もうつ状態になってしまうかもしれない。ネットで叩かれると、思っている以上に精神的なダメージが大きい。ありえる事です。
もし、そうなったら、どうなるでしょうか?
母親のアルバイトと姉の協力で、なんとかなっている彼女の学校生活が出来るかどうか怪しくなって来ます。
本格的に生活保護を検討しなければいけなくなる。
繰り返しになりますが、趣味にお金を使えているとは言え、進学を諦めたり、クーラーが使えない状態である事を考えると、予備軍である事に間違いはない。
彼女やその家族は、もうすでに、生活保護が必要なガチの貧困状態にまであと数歩進むと、なってしまう状況にいるんです。
だからこそ、バッシングをして、彼女とその家族を追い込んではダメなんですよ
バッシングには、何の意味も無い。解りますか?
あの女子高生に、「あまえは貧困じゃない」とか「甘えるな」とか、バッシングした人たちは、彼女の背中をドンと押して、生活保護が必要なレベルの貧困まで落とそうとしている事に気がついていないのか?、と声を大にして言いたい。
僕らは、もっと彼女やその家族を応援し、味方になって行かなければいけないんですよ
僕らに出来る事は限られています。しかし、ネットやSNSに書き込む時は、もっともっと、貧困を解決するためにはどうするべきなのか?という視点を持ってほしい。
バッシングするだけじゃくて!
なぜなら、今の日本は、貧困予備軍が大勢いる時代に突入しているからです
解決するにはどうするか?という視点を持っていれば、貧困予備軍であるあの女子高生をバッシングして、生活保護が必要なガチの貧困状態まで追い込むような事はしないはずです。そんな発想にはならないでしょ?
どうでしょうか?僕は友人に上記のような説明をしました。
ぜひ、じっくり考えてほしい。
共に、貧困を解決する視点を持って行こうではないか?!