東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

ホームの災害 情報が弱者を助ける

 東北地方を縦断した台風10号。岩手県でグループホームの高齢者九人が犠牲になるなど、東北・北海道で大きな被害が出た。毎年のように繰り返される豪雨災害。人的被害はなぜ、なくせないのか。

 岩手県岩泉町の高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の入居者九人が犠牲になった。同町では二日間で約二五〇ミリもの集中豪雨に見舞われ、同ホームの近くを流れる小本川が氾濫した。

 同じ敷地内にある三階建ての高齢者施設「ふれんどりー岩泉」では、全員が三階に避難して無事だった。ホームの入居者も同施設に移動していれば悲劇は防げた可能性が高い。早めの避難ができなかったことが残念だ。

 今年の気象白書「気象業務はいま」は冒頭で「この数年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化している」と危険度の高い集中豪雨が多いと指摘。課題の第一に「夜間の避難の回避」を挙げている。

 気象庁は早くから関東・東北に上陸の恐れとの予想を出し、警戒を呼びかけていた。岩泉町は三十日午前から「避難準備情報」を出していた。これは要援護者など避難に時間がかかる人は避難行動を始めるようにという情報である。このときにホームでも避難を始めていれば、と考えてしまう。

 近年、ダムや堤防などの整備が進み、少々の雨では水害の心配がなくなった。河川によって違うが、五十年に一回とか百年に一回の豪雨では氾濫すると想定されているものもある。このため、突然、今までに経験したことのない災害に襲われることになる。

 今回の台風10号はまさにそうだった。東北直撃の台風は一九一三年以来という。北海道もこの八月、上陸した台風だけで三個、通過、接近を含めると10号は六個目で、過去に例のない事態である。

 豪雨災害は今年に限らない。二〇一三年は東京都の伊豆大島で、一昨年は広島市で、昨年は茨城県常総市など関東・東北の広い範囲で起きた。

 日本はもともと自然災害が多い。安全な場所を選んで暮らせれば良いが、平地が少ない。便利な場所を求めて、崖下や河川に近い場所に住宅や公共施設、道路が造られる。そうした場所は、危険と背中合わせである。

 災害弱者の施設などは計画的に安全な場所に移転させるべきだ。それまでは、私たち一人一人が、災害情報に敏感になり、「いつもと違う」ときに適切な対応を取ることで、悲劇を防ぎたい。

 

この記事を印刷する

PR情報