最近、インターネットを開いて、Twitterや、facebookのタイムラインで、「貧困」というワードを見ない日はありません。
日本は、成長を終えた成熟国家(衰退国家)なので、こういった貧困や、かつての平均的可処分所得を得ることが出来ない人が増えるのも当然で、それらが、見える化することも当然だといえます。
今日の記事では、そんな当たり前のように、所得水準が下がりつつある日本と、アジアの成長の象徴とも言えるようなシンガポールの、所得の差を、客観的に見つめ、世界での日本の立ち位置を考えるきっかけにしようという主旨です。
シンガポールが、どういった国かというと、過去にこんな記事も書いていますので、参考にしてみてください。
参考:シンガポールから見る、民主主義と資本主義の相性の悪さ
1965年に、マレーシアから追放される形で独立した、この国は、日本が高度経済成長期に入った頃でも、国際社会では目立つ存在であありませんでした。
それが、現在では、アジアの金融センターとして発展し、一人あたりの GDPでは、日本を大きく突き放しています。
2015年のデータで、シンガポールの一人あたりのGDPは、世界7位・52900ドル。日本は、世界26位・32000ドルです。
(出典:世界経済のネタ帳)
月収70万円が、シンガポールの世帯月収の中央値です。
シンガポールで就労ビザを取得することは、難しいと苦言する日本人は、沢山いらっしゃいますが、その理由のひとつは、ビザ申請にあたっての、最低給与水準です。
シンガポールでホワイトカラーの就労は、EPビザ(Employment Pass)が必要で、これにアプライをするための、最低給与は、3300シンガポールドルです。さらに、2017年より3700シンガポールドルに引き上げられます。
低付加価値の仕事は、WP(work permit)が、別にありますが、日本人が、働くなら、通常こちらのビザです。
では、この最低月給3300シンガポールドルが、シンガポールで、外国人向けに、高めに設定されているかというと、そんなことはありません。
下記のデータは、シンガポール政府の発表による、一世帯あたりの所得の中央値です。
(出典:Singapore Department of Statistics)
2015年の、最新データで、月給8660ドルが中央値です。
ざっと、70万円くらいです。
一応、注意書きですが、これは「一世帯」あたりの数字です。
シンガポールでは、共働きが、一般的で、家の家事は、先述したワークパーミットのビザで、来ているフィリピン人とかを、メイドで雇っていることが、多いです。
一世帯、一ヶ月に、70万円稼ぐのが、平均なので、就労ビザ申請の条件3300シンガポールドルは、シンガポールという国にとって、全く高く設定されている訳ではありません。
「シンガポールが高い」のではなく、明らかに、「日本が安い」のです。
僕は、シンガポールで、ロングステイしたことはないですが、(最長で二ヶ月滞在くらい)EPビザ申請にあたる最低月給の、月30万円前後の給与で、シンガポールで、生活するのは、結構苦しい生活になるはずです。
雇用主が、日系企業かどうとか、前提によると思いますが、手当なしだと、リトルインディアの外れに住んで、電車通勤をする生活になりそうです。
月30万円では、車については、維持費も、駐車場代も、まず払えないです。
ボーナスをいれない基本月給で30万円を貰える日本人といったら、どれくらいいるでしょう。
そして、月30万円では、シンガポールでは、中の下くらいです。
シンガポールからしたら、月30万円以下の月給の、自国より稼げない人は、必要ないのです。
低付加価値の仕事ならありますが、それらの仕事をカバーするwork permitビザは、中国人や、フィリピン人などを対象にしていて、日本人の対象ではありません。
また、一世帯月に70万円が平均程度だとすると、それより稼いでいる世帯は、相当数あります。
衰退国家ではなく、成熟国家になるために。
とはいえ、僕が主張したいことは、必ずしも、「月30万円しか稼げないのは、中の下だから、もっと稼げるようにならないとヤバイ!」という話ではありません。
まず、認識すべきこととして、日本人の中で、決して低い給与に思えない、35万円(ボーナス含んで、年収700万円くらい)稼いでも、先進国の水準としては、中の下ということを、しっかり知るのは、大切だと思います。
未だに、一億総中流だと思っているから、逆に、精神まで、過度に、貧困になるのではないかと思います。
自分は、中流以下だから、「持ち家は持たない」「生命保険は加入しない」「支出を下げても、今の時代だから得られる豊かさは?」と思考するほうが、有意義な気がします。
また、そうではなく、この数字を知ったうえで、グローバルエリートを目指したい、所得を最大化したい、という人は、そちら側に行けば良いと思います。
僕は、どちらかというと、前者です。
そういった縮小経済でも、楽しめる術を見つけていくことが、日本を、衰退国家ではなく、成熟国家とする筈です。
自分の立ち位置と、世界での日本の立ち位置を知ることは、大切だと思います。
ちなみに、この本は、シンガポールの、今日までの成長の政策などを、まとめた書籍です。
シンガポールの政策の全てを肯定する訳ではないですが、ここには、日本の政治を考える上でも、知っておくべきことが、沢山書いてます。
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