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<豪雨水害>高齢者施設、対応難しく

毎日新聞 8月31日(水)23時27分配信

 災害弱者である施設入所の高齢者が犠牲になった今回の水害について、過去に同じような体験をしたグループホーム関係者は異口同音に避難の難しさを指摘した。

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 茨城県常総市の「グループホーム香(かおり)」は、鬼怒川の堤防が決壊した昨年9月の関東・東北豪雨で床上1.2メートルの浸水被害に遭った。運営会社社長の中尾一郎さん(57)が当時の状況を振り返る。

 堤防が決壊したのは9月10日正午過ぎ。入所者9人(要介護度2~5)は80~108歳で、全員が認知症を患っていた。入所者と職員4人が午後5時半ごろに2階に避難すると、約30分後には浸水が始まり1階の床上まで達した。

 常総市内では「雨のごう音で防災無線が聞こえなかった」というケースが多数あったが、混乱していた中尾さんは、放送があったのかさえ覚えていない。電話もつながりにくく、「避難しても途中で被災する可能性があり、判断の下しようがなかった」。

 翌日午前2時ごろ、自衛隊のボートが救援に来た。しかし、「乗れるのは1人か2人だけ」と言われた。入所者を単独で避難させるわけにはいかない。かといって職員が同行すれば、残った人たちの対応に手が足りなくなる。避難を断った。

 そもそも避難所に移ること自体に難しい面がある。「認知症の高齢者は大勢の人がいると興奮する。トイレの問題もある。他の避難者に迷惑をかけてしまう」。浸水するまでホームにとどまったのは、それも理由だ。

 最終的には11日午後4時ごろ、全員が消防のボートに救出された。避難先は避難所ではなく、同県下妻市の中尾さんの実家だった。「避難所の問題がある限り、『自分たちの施設の面倒は、自分たちでみる』という状況は、昨年の水害の前も後も変わっていない」

 同様に、関東・東北豪雨で床上浸水した宮城県大和町のグループホーム「けやき」を運営する医療福祉グループのエリアマネジャー、塩原一樹さん(36)は「人的な余裕がないと、安全な避難はほぼ無理だと思う」と話す。

 昨年の水害では、夜勤帯で職員が減る夕方になってから施設周辺の水位が足首まで迫り、同じ敷地内の別の建物2階への避難を決めた。全員が認知症の9人の避難は、職員がほとんど1人で付き添い何度も往復した。「入所者本人が危機感を持ちづらいため、職員はどうしても手を取られる。避難情報を確認する余裕はなかった」。岩泉のグループホームの被害を知り、塩原さんは「うちと同じような状況だったのでは」と気遣った。【高橋昌紀、馬渕晶子】

最終更新:9月1日(木)7時39分

毎日新聞

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