概要:『イット・フォローズ』で脚光を浴びたデヴィッド・ロバート・ミッチェルが監督を務め、ある夏の出来事を描く青春ドラマ。アメリカの「お泊まり会」という非日常を味わえるイベントをテーマに、思春期の少年少女たちの揺れ動く心模様を鮮やかにすくい取る。『イット・フォローズ』にも出演したクレア・スロマが主人公を好演。夏の終わりの物悲しさと共に描かれる、青春時代の切ない時間が琴線に触れる。(シネマトゥデイ)
製作国:アメリカ 上映時間:96分 製作年:2010年
監督・脚本:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
キャスト:クレア・スロマ / ジェイド・ラムジー / ニキータ・ラムジー / マーロン・モートン / エイミー・サイメッツ / アマンダ・バウアー 等
心地良い時間の後のちょっとした切なさに高評価
新感覚ホラー【イット・フォローズ】で注目を集めた、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の長編デビュー作【アメリカンスリープオーバー 】を下北沢のトリウッドという小さな劇場で観て来ました。
トリウッドは初めて行ったんだけど、席は50席あるかないかくらいの狭く空間に、天井に取り付けられた市販のプロジェクターとスクリーンで観るようなスタイルが、映画の内容にも合って良かったですね。みんなで観てる的な雰囲気で。
本作は【イット・フォローズ】のようなホラー映画ではなく、わりと真っ当なティーンが集う青春群像劇だ。感想は、
学生時代をやり直したくなるソワソワ感!僕好みの映画でした!
スリープオーバー(お泊まり会)なる異文化の催しを堪能し、やっぱ外国の子はマセてるなぁと思うも、なんかこのミラクルが起きそうなマッタリとした時間が羨ましく、こんな思春期まっただ中のドキドキはもう味わえないんだろうなと切なくもなった。ネタバレどうこうの映画では無いですね。
↑ お年頃のマギーと親友のベル。マギーのむっちっとした身体がこの年頃の女の子っぽい。
夏の終わりに開かれる恒例の催し?スリープオーバーはハロウィンみたいに一斉に街全体で開かれる。9月で新学期を迎える学生にとってはタイミング的にも一番ワクワク&ソワソワを孕む、多くの『好意』が錯綜する一夜だ。
男子は男だけでダラ〜と友達の家に集まりエッチな映画を観てはグダグダ、女子は女はだけで集まりガールズトークやウィジャボードを楽しみ、上級生は水辺で男女混合のパーティー。で、夜中に男子チームは女子の家に行こうぜ!と街に繰り出す。こういう流れがどこか修学旅行の夜のノリみたいで良いのよね。
お酒を飲むのがこのティーンの間では大人っぽくてクール!やらた色めき立つ一夜をどう過ごすかは自分次第!と言った具合で、日本にはあまり馴染みのない文化と時間を味わえる。
『学生時代あるある』が詰まっている
男との思い出を作りたいマギーと親友のベル、スーパーで一目惚れした女の子を捜し回るロブ、彼氏の元カノの家に泊まりに行くことになったクラウディア、高校時代に美人の双子に好意を持たれた事を今になって知り、会いに行こうの決意するスコット。大まかにこの4つのソワソワとしたストーリーをスリープオーバーの一夜に絡めて魅せていく。
↑ スーパーで同年代であろうブロンド美女に一目惚れしたロブ
クスッとさせるユーモアに乗せて、あの頃(学生時代)のドキドキや思春期の機微が本作にはいっぱい詰まっていた。
視線で自分に好意があるなと悟ったり、実際それが好意の眼差しじゃなくても良いように勘違いして受け入れてしまう男の単純さ。指と指が触れそうな距離感。『男が女性に質問しちゃいけないTOP10』に入りそうな「キスしてもいい?」ってセリフも2〜3回出て来たり、「向こうで話そう」と呼びかけたり、好意を寄せる人に会う為の異常な行動力などなど、分かるなぁと思わせる描写が多く、なんか懐かしい。
登場人物の数はかなり多いもののちゃんと交通整理が出来ていて、監督はホラーより断然こっちの方が得意なんだろうなと思わせる。
作品の青春感は【イット・フォローズ】と地続きな感じがして、あっちが『不安』の物語ならば、本作は対照的に『予感』や『期待』の物語だ。
実のところ夢物語=夏?
↑「高校時代にどっちが俺に好意を寄せてたんだ?」と探るスコット
【アメリカン・スリープオーバー】の原題は『The Myth Of the American Sleepover』で辿タイトルの中に『Myth:神話』という単語が入る。
というのも実はこの映画『親』がほとんど出て来ない。敢えて親は出さす子供達だけの神話というか神聖で特別な時間としてスリープオーバーを捉えている。
そして監督談によるとここまで一斉にスリープオーバーが開かれることは実際にはないらしく映画用のフィクションとのこと。
なのでこの物語は監督の育ったデトロイトの街を舞台としたリアルな空気感と、フィクショナルな非現実とが混ざる夢物語なのだ。
そしてその夢物語的スリープオーバーの1日が『夏』という季節そのものを上手く表しているのが良いなと思った。
始まる前は何をしようかな・何が起こるのかと期待を胸に膨らませ、スリープオーバーの最中はソワソワしながらも色々と意欲的に行動し、さんざん楽しんだ終わり際はちょっと気が抜けちゃって、その一夜が明けると清々しくまた新たな期が爽やかに幕を開ける。
↑ 勝ち気なクラウディア、こういう子クラスに一人はいるんだよね。
こういうの観ちゃうとアメリカ人に生まれ変わって、向こうの学生時代を一度味わってみたいな〜と思う。時に残酷な現実を突きつけるプロムとか、親が出掛けてるプール付きの友達の家でDJできる奴とか呼んでどんちゃん騒ぎとか。
出てくる子はみんな素人
本作に出ている子らは基本演技素人の子達らしい。観ている間はそんな素人臭さは感じることなく、逆に素人のリアルなあどけなさが上手く作品にハマってるなと思う。
【イット・フォローズ】では凝ったカメラワークが目立ったけど、本作は小細工なしに彼らに寄り添うような撮り方で通していて、作風よってちゃんとコントロール出来てる監督のセンスもイイですね。
個人的にはスコットの妹ジェンが一番可愛いくて好きだな。笑顔がイイ!メインのキャラじゃ無いんだけど、ちょこちょこと顔を出す美味しい役。この映画「お前はどの子が好き?」的な話も出来る語り甲斐のある作品でした。
まとめ
良かった点
- スリープオーバーという新鮮な異文化を扱扱いながらも、懐かしくさや共感させる描写やシーンが多くグッと来る
- 役者を使わずに素人を起用したのが作品にもハマっていた
- リアルな部分とフィクションな部分を混ぜ、監督が意図してちゃんと作品をコントロール出来ている
- 作品全体の夏休み的まったりとした空気感
悪かった点
- あんまり無かったかな。強いて言うなら決定打となる「これだ!」っいうグッと来るシーンや胸をエグるみたいな展開が無かったかな
評価:★★★★ 結構良かったぜ!
まだDVDにもなってない作品なので観に行けそうな人は是非!宇多丸さんもお気にみたいですね。正直ずっと観ていられる。
トリウッド、席が少ないのもあって基本満席みたいです。事前にプラス400円払って座席指定予約していくのが良いと思います。電話で予約するシステムもアナログで良いね。予約すると特典でポスターか特製パンフもらえますよ。非売品なのかな?
パンフをもらいましたが、同じようなティーン映画を年代別で色々紹介してて、なかなかGOODです!誤字あったけど…
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イット・フォローズ
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に
リチャード・リンクレイター監督最新作の青春映画。この作品にも通じるんだろうな。本作のスコットと双子の姉妹が同年代くらいかな?今年の11月公開。
ティーンどんちゃん騒ぎ映画。こういうのも味わってみたい1つ!でも自分の家だったら死んでる。
恋のからさわぎ
学園モノならこのラブコメが好き。確か主人公の女の子の父親役が最高だった気がする。もちろんヒース・レジャーも良いよ!