「私の判断ミス」高齢者施設常務理事
大型の台風10号は30日に岩手県に上陸した後、東北地方を縦断して日本海に抜け、31日午前0時に温帯低気圧に変わった。岩手県や県警によると、岩泉町の小本(おもと)川が氾濫し、同町乙茂地区にある高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」で入所者の高齢者9人が意識不明の状態で見つかり、全員の死亡が確認された。
高齢者グループホーム「楽ん楽ん」を運営する法人の佐藤弘明・常務理事(53)は31日、現地で取材に応じ、「亡くなった方、遺族の方に本当に申し訳ない限りです。本当にすみません」と10秒以上、頭を深く下げた。過去の経験から「大丈夫だろう」と考えたと悔やんだ。
佐藤理事によると、30日午後5時50分ごろには足首程度だった水位が急上昇。救助のため施設に向かったが、施設付近で鉄砲水に押し流された。「今思えば午前のうちに避難しておけば良かった。全て私の判断ミスです」と唇をかんだ。
30日午後4時ごろ、町役場から川の水量を問い合わせる電話が来た。川があふれるまで20センチ程度余裕があることを確認してビデオで撮影。「過去の経験から2時間ほどの余裕はある」と4時半ごろ、町役場に伝えに行った。しかし、戻って来た5時50分ごろ、すでに施設は胸の高さまで水位が上昇していた。
楽ん楽んは平屋建てで、入居者9人と夜勤の女性職員が1人いた。水位が上がる中、職員は男性入居者を抱えながら泳いで救助を待ったが男性は水が引く前に力尽きたという。
9人のうち3人は個室で、2人はキッチンで、他の入所者は玄関近くなどで見つかったという。【駒木智一、滝川大貴、小鍜冶孝志】