防衛省が来年度予算案の概算要求を公表した。総額は過去最大の5兆1685億円。今年度当初予算に比べ2・3%増で、要求増は5年連続だ。

 北朝鮮はミサイル発射実験を繰り返し、中国の軍備拡張や海洋進出が続く。日本にとって、一定の防衛費の負担が避けられないのは確かだ。

 一方で、忘れてならないのが日本の未曽有の財政難だ。限りある予算の中で、どれだけを防衛費にあてるのか、個別の使い方が妥当かどうかの判断には、国民の理解が欠かせない。

 政府は国会などを通じて丁寧に説明すべきだし、野党は政府に対して、防衛費についてしっかりただしてもらいたい。

 焦点の一つは、ミサイル防衛だ。イージス艦に積む「SM3ブロック2A」の導入費147億円や、地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)の迎撃範囲を約2倍に広げる改修費1056億円などを計上した。

 ミサイル防衛の強化には米国の期待が高いが、多額の費用がかかる。費用に見合う効果があるのか。他の装備と比べどこまで優先すべきなのか。

 尖閣諸島周辺を航行する中国艦艇などを念頭に、陸上自衛隊の地対艦ミサイルの射程を伸ばす開発費など116億円も盛り込んだ。ただ、領海侵入を繰り返す中国の公船に対処するのは海上保安庁だ。当面は海保の能力強化を重視した方が効果的な面もあるだろう。

 懸念されるのは、将来的に防衛費の拡大が続き、財政全体を圧迫することだ。

 戦闘機F35Aといった最新鋭の米国製兵器の購入が相次ぎ、複数年にわたって分割払いする「後年度負担」がふくらんでいる。兵器が高額なら維持費や修理費もかさむ。

 財政難で軍事費の削減を迫られている米国では、日本など同盟国にさらなる負担を求める声が出ている。そうしたことを背景に、日米同盟強化を唱える安倍政権は安全保障関連法を成立させ、新たな任務に向けた自衛隊の訓練も始めた。

 安保法のもとで自衛隊が活動できる範囲は世界規模に広がった。中期防衛力整備計画は14~18年度の防衛費の総額を24兆6700億円としているが、日本防衛の負担増もあわせ、次の中期防に向けて防衛費拡大の議論が強まる可能性がある。

 少子高齢化の進む日本が、防衛費の負担増にどこまで耐えられるか。軍事だけでなく、緊張緩和をはかる外交努力とあわせて、日本の安全をどう守っていくか。骨太の議論が必要だ。