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築地市場 納得のできる手続きを

 東京都の小池百合子知事は、11月7日に予定されていた築地(中央区)から豊洲(江東区)への市場移転を延期すると表明した。

     小池知事は、豊洲市場の安全性、巨額な費用、情報公開不足の3点を延期理由として挙げた。

     豊洲市場をめぐっては、2008年に敷地から環境基準を大幅に超える有害化学物質のベンゼンが検出されて以来、安全性の問題がクローズアップされてきた。

     このため、都は汚染された豊洲市場敷地の土壌改善工事を実施し、14年に終えた。今回、小池知事が問題視したのは、工事後に実施してきた地下水のモニタリング調査が終了していないことだ。

     これまで7回のモニタリング調査の結果では、環境基準を満たしていた。最後の調査が11月18日に始まり、結果は来年1月ごろに出る。その結果の判明前に移転することに難色を示したのだ。

     東京五輪・パラリンピック開催が決まり、移転後の築地市場跡地には環状2号線が通る予定だ。その整備を急ぐため、移転日が早めに設定されたともいわれる。

     確かに、調査をしている以上、結果が出る前に移転をすることは、手続きとして疑問が残る。その意味で、いったん立ち止まると判断したことは理解できる。

     だが、延期後の着地点を小池知事はどう描くのだろうか。

     延期によって、豊洲市場では1日700万円のコストがかかる。また、引っ越し準備をしていた業者への補償問題も発生するとみられる。そうした費用を負担するのは都民だ。

     築地市場での水産物の扱い量は世界最大級だ。また、水産物、青果を合わせた取引高は年間約5000億円で、全国の中央卸売市場の中で群を抜く。築地市場を通った水産物は全国に流通する。築地市場の移転の影響は、東京だけの問題にとどまらない。

     小池知事は、豊洲市場の総事業費が5800億円を超え、予定を大幅に超えている点も記者会見で指摘した。特に建設費が膨張している点を強調した。

     有識者によるプロジェクトチームを設け、こうした過去の経緯を検証するという。もちろん検証自体は意味がある。だが、建設費などの検証は移転時期と直結しない。移転の延期と切り離して精査できる。

     築地の移転問題は、小池都政のシンボルになっている。都議会などから都政の主導権を奪うための政治的な思惑もあるだろう。だからこそ、延期の必要性とその後のビジョンを丁寧に説明し、納得のできる手続きを進めてほしい。

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