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台風10号被害 なぜ避難は遅れたのか

 台風10号は東北や北海道に大きな被害をもたらし、岩手県岩泉町では高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」の居住者9人が濁流にのまれて死亡した。

     いずれも認知症の高齢者とみられる。強い台風が東北を直撃する情報が1日以上前から流されていたのに、なぜ被害を避けられなかったのか。災害弱者対策の検証が必要だ。

     「楽ん楽ん」は社団医療法人「緑川会」が5年前に開設し、認知症の高齢者9人が入居していた。近くを流れる小本(おもと)川の水位は30日夕から急速に上がり氾濫した。

     敷地内には同法人が運営する3階建て高齢者施設があり、入居者や職員は3階に避難して無事だった。不可解なのは、平屋建ての「楽ん楽ん」では全員が犠牲になったことだ。夜勤の職員が1人いたが、入居者を助けられなかったという。

     台風などの災害には早めの避難が鉄則だ。気象庁は29日には台風10号が東北地方に上陸し大雨をもたらす予報を繰り返していた。

     岩泉町は小本川流域には避難準備情報を出したが、避難勧告や避難指示は出していなかった。同町の対応に問題はなかったのだろうか。

     高齢者グループホームは災害に対する避難計画を立て、消防機関への通報体制を整え、定期的に避難訓練を行うことが法律で義務づけられている。高齢者は温度調節や医療ケアのある避難場所が必要な人も多い。避難準備情報に対して同法人はどんな判断をしたのだろうか。

     少人数の居住施設である高齢者グループホームはこの10年で倍増し、現在は約1万2000カ所に上る。1施設に5〜9人が暮らし、昼間は高齢者3人に職員1人、夜間は職員1人体制で運営することが法律で決められている。

     利用者は認知症の人がほとんどで、近年は複数の持病や身体障害のある人が増え、重度化が進んでいる。職員の負担が重いことなどから離職率も高く、専門性の高い職員の確保が難しいといわれる。

     高齢者グループホームをめぐっては長崎県や札幌市で多数の居住者が死亡した火災があった。日本認知症グループホーム協会などは夜間1人の職員体制では災害時に居住者を避難させることが困難だとして、補助金や人員配置の拡充を国に求めている。

     一方、火災対策でスプリンクラー設置が義務づけられ、運営費の切迫という悪循環をもたらしている。

     きょうは防災の日だ。従来は台風のルートでなかった北海道や東北にも最近は台風が上陸するようになった。どこでも重大な天災被害が起こり得ることを肝に銘じ、万全の対策を立てる必要がある。

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