WEDGE REPORT

韓国犬肉事情、不法と合法の間に取り残される国民の健康

崔 碩栄 (チェ・ソギョン)  ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

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時間軸の長い視点で深く掘り下げて、世界の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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 もちろん、屠殺された数、流通した数も分からないために統計を取ることもできないので、その動向については推測に頼るほかはない。2006年の国務調整室による調査資料によると、年間165~205万匹の犬が屠殺されているという。これは韓国内で年間に屠殺されている牛や豚の合計よりも多い数である。

 この点については、韓国国内でもマスコミが繰り返し報道し、指摘してきた。病気等で死んだ犬、汚染された環境で屠殺された犬、いつ屠殺されたのかすらわからない、流通期間も把握することのできない犬肉が流通している現実に対し、政府の処置を求めているのである。

 だが、これについて政府は現在まで対応することなく来ている。政府も対応に苦慮するところであるが、対応できずに来ている、というのが正しいこころだろうか。

 もし、政府が犬肉を畜産物衛生管理法上の「家畜」に定める、つまり犬肉を公に認めることになったら、犬肉は合法化し、飲食店での提供はもちろんのこと、スーパー、あるいはコンビニでも犬肉加工食品を目にすることが出来るようになるだろう。そうなれば、欧米の動物愛護団体はもちろん、他の外国人たちの目に留まることになる。これは国際社会の「目」を気にしてきた韓国としては、これは何とかして阻止しなければならない大問題である。

 とはいえ、逆に、犬肉を不法だと断定したら、既存の犬肉販売業者や犬肉愛好家たちが黙っていないことだけは明白である。牛や豚と何が違うんだ、伝統的食文化を外国の目を気にして捨て去るのか、と反発されたときに、彼らを説得できるだけの理由をみつけだすことは難しいのだろう。韓国政府はジレンマを抱えたまま、「放置」という苦肉の策にすがっているのである。

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著者

崔 碩栄(チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

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