Rendang Sapi|Beef Rendang
たっぷりの香辛料・香味野菜でじっくり煮込む|ごちそうビーフ・ルンダン
勝手にインドネシア月間の締めくくりはルンダンで。
インドネシア・スマトラ島のパダン料理のひとつ。
元々、お祭りや大事なお客様をもてなす為の料理だそう。
大事な財産である牛を使い、個性豊かなスパイスと香味野菜を
時間をかけて水分を飛ばしながら同じ方向へとまとめ上げる。
出来上がったそれは、見た目オレンジの油が滲んだ焦げ茶色の物体。
ビジュアル的には美しいとは言い難い。
ところが口に含むとピアノとオーケストラみたいな豪華さで複雑な香り、
深さのある旨味、辛味、野菜・ココナッツミルク・脂の甘み、ほのかな酸味。
全体の調和をはかる指揮者に該当するのは最初と後半に加えるココナッツ達。
洗練された見た目の料理ではないけど、その味わいは格別。
ペーストの中の水分の保有度で、味の印象が大きく変わるルンダン。
自分の頭の中に理想の仕上がりが有るのだけど、未だに
100%満足のいく、完璧!と思えるものには辿りつけず。
次回こそ100%に!と決意を新たにこぶしを握りしめる私。
それでも、90%の出来でさえ十分に美味しくて
食べると何とも言えない幸せな気分になるのです。
味の構成|
・ガラムマサラにも似たスパイスミックス
・香味野菜のペースト
・牛ブロック肉とそのスープ、香り付けのレモングラス+コブミカンの葉
※サラムリーフ+ターメリックリーフ(無ければ省く)
・ココナッツミルクとココナツロング、ファイン
ルンダン・スパイス|
コリアンダー+クミン+黒胡椒+白胡椒+フェンネル+クローブ+キャラウェイ
グリーンカルダモン+ブラウンカルダモン+フェヌグリーク+スターアニス+
ロングペッパー+ニゲラ+シナモン+ナツメグ+ドライチリ
香味野菜のペースト|
バワン・メラ(赤小タマネギ)+ニンニク+生の唐辛子赤・青+ショウガ+
ターメリック(パウダーで代用)+ガランガル+クミリ(キャンドルナッツ)
※酸味と旨味付けのアサム・カンディス(タマリンドで代用)
鍋に何時間も付きっきりとは行かないので、牛ブロック肉は
予め下茹でし温め直しを繰り返し、二時間程×3日で完成。
その後2、3日かけて食べつくします。
大雑把な作り方|
ホールスパイスは乾煎りしてから粉末にする。
牛ブロック肉はレモングラス+コブミカンの葉+水を入れ
圧力鍋で煮る。肉は柔らかくしても、ほぐれない様に注意。
ソテーパンでココナッツミルクの油分でペーストにした香味野菜と
ココナッツロングを焦がさないよう丁寧に炒める。
鍋より浅く、フライパンより深さのあるやや厚手の
ステンレスのソテーパンを使用。
粉末にしたスパイス・ミックスを加えて更に炒める。
(この時点で小分け冷凍可能。卵やジャガイモのルンダンに少量使う)
ペーストに牛ブロック肉とスープを戻し、ココナッツミルクを加えて
レモングラス+コブミカンの葉を追加して弱火で煮込む。
途中、柔らかくなった肉と少量のペーストを引き上げ別鍋に移す。
(仕上げの際に肉が無い方が混ぜやすいので分けておく)
温め直しを繰り返し、水分の調整をして仕上げの少し前に
ココナッツファインを追加して炒めてから塩で味を整える。
食べる際に、必要な分量の牛肉を切り分けてペーストと一緒に軽く温める。
好みでバワン・ゴレン(素揚げした赤小タマネギ)、コブミカンの果皮、
またはコブミカンの葉、唐辛子などを添える。
あ、ごはん 炊き忘れないようにね。
出来上がりの目安はコブミカンの葉が知らせてくれる。
香り付けの為に入れるコブミカンの葉は、水分が多い間は
ペーストに埋もれてるんだけど、段々と水分が飛び
オレンジ色に染まった油分がちびちびとにじみ出てくると
炒めている途中で、このツヤツヤのコブミカンの葉っぱが
ピョンと飛び出すようになるのです。
そしたら「後もうちょっと」のサイン。
鍋肌に隙間を作るとジワジワと油分が染み出す。そしたら完成。
鍋底に焦げ付くようになると、煮込み過ぎ。
ルンダンは冷めたのを温め直したり、冷蔵庫へ入れたりと
時間を置くと、それぞれの素材がほどけてきて交じり合い
どんどん美味しさが増すのです。
だから使う牛肉は最後までしっかり身が残る赤身と
旨味の元でもある脂肪を含むとろける部分、
スネ肉やスジ肉などいくつか混ぜて使います。
鶏やラム肉も美味しいけど、やっぱり牛肉が一番。
圧倒的な味のルンダンは、タマリンドとトマトを加えた卵や
クミンとターメリックを追加したジャガイモ・ルンダンといった
他の素材を加えても、異質な味をまるっと飲み込んで自分の味に加えてしまう。
それは、何をしてもルンダンで旨みが一段重なるだけなの。
厚めに切ってカービングしたニンジンと大根の甘酢漬け。
これは飾り付けと、途中で舌を休ませる為のもの。
一緒に添えたグリーンの葉はDaun Sirihダウン・シリと呼ばれるキンマ。
タイ料理のバイ・チャプルーの方が有名ですかね。
使わない枝の部分を挿し穂で増やしたもの。
これにルンダンを包んで食べると、葉の独特な香りと交じり合い
また別の旨さが楽しめるのです。
辛いのが大好きな腹ペコさんはごはんとルンダンに
卵やジャガイモを混ぜながら無言でひたすら食べます。
たまに口を開くと「お水ー」
そして人のニンジン甘酢漬けを横取り。
もう一人は辛いのは好きだけど、激辛は苦手。
そんな時はココナッツミルクを用意して、スプーン一杯くらい
ルンダンにかけて食べます。これだけで随分と辛さが和らぐのです。
甘酢漬けのニンジンや大根、プチトマトといった口直しの野菜を
ちびちび。休憩しながらゆっくりとたいらげる。
「辛いことは辛いんだけど、この旨さでスプーンを置きたくないの」
「ルンダンって食べ始めると止まらないんだよねー」
料理というのは一口目が旨いのは割と簡単。
でも最後まで旨いとか、翌日も旨いというのは案外難しい。
ところが、ルンダンは日を追うごとに旨さが増す。
だから今まで、ルンダンを作って食べ飽きた記憶が無いのです。
最後の一皿はいつも「ああ、これでお終いか」と
宴の終わりにも似た名残惜しさ。
エネルギッシュな一皿で、祝い事の為に何時間もかけて
用意されるだけのことはあるよねーと納得の味なのです。
これぞ、まさしくご馳走なり。
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