■芸能界に残る、旧態依然とした商慣習
現在、政府が強力に推進している政策のひとつに、日本の魅力を海外に発信する「クールジャパン」があります。特に「コンテンツ」「ファッション」「デザイン」「観光サービス」等に重点を置き、海外で人気の高い商材やコンテンツに関する情報を積極的に発信しています。中でもエンターテイメント領域のコンテンツについては、今後大きな成長が期待できると注目を集めています。一方で、今後もSMAPのように世界に通用する「優良コンテンツ」を継続的に生み出す仕組みを構築するためには、タレント、アーティスト等が自由に活躍できる環境を整えることも必要です。しかし各種報道の中には、芸能プロダクション業界には、未だに旧態依然とした慣習が残っている、と報じているものがあります。またニューヨークタイムズなどの海外のメディアからも、日本の芸能事務所と所属タレントとの契約に関する問題点が指摘されています。
各種報道で指摘されている芸能プロダクション業界の商慣習のうち、問題があるとして指摘されているものは、以下の通りです。
1.メディアとの「バーター取引」の存在
真偽は定かではありませんが、一部メディアは、過去に芸能事務所の一部が、その優越的な地位を利用して、TV局や出版社等に対して、自社と競合する事務所のタレントが出演する番組等への自社タレントの出演を拒否する「共演NG」、自社タレントの写真等の掲載を許可しない「掲載拒否」などをちらつかせて、自社の意向を通すための「働きかけ」を行ったケースがあったと報じています。
仮に上記報道が事実だったとしたら、公平・公正であるべき番組や報道内容に、特定の事務所の意向が強く反映された可能性も否めません。また、独占禁止法に抵触する可能性も指摘されていますので、一度「バーター取引」全般については、放送局の監督官庁である総務省等がその実態を調査し、その結果如何によっては、取引慣行の是正を勧告するなどの措置を講じる必要があると思います。
2.所属タレントに不利な「マネジメント契約」の内容
ニューヨークタイムズは、ジャニーズ事務所に関する記事の中で「このビジネスモデルは喜多川氏がアジアで編み出し、SMAPをはじめとするグループで、とてつもない成功をおさめ、以来、中国や韓国の芸能事務所もこれに倣った。その多くは、長い場合は10年以上にもわたり、稼ぎの半分以上を事務所にとりあげられる『奴隷契約』を子供に交わさせるものとして批判されている。」と報じています。
上記ニューヨークタイムズの報道にもあるように、ジャニーズ事務所に限らず、所属事務所とタレントとの間で締結されたマネジメント契約の中に、コンプライアンス上の問題があり、かつ契約タレントにとって著しく不利な内容のものが存在するとしたら、是正を検討する余地がありそうです。
3.タレントの独立、移籍を阻害する「妨害行為」の存在
これについても真偽は定かではありませんが、一部メディアは、所属事務所と揉めて独立や移籍を行ったタレントについて、ある大手事務所がメディアに対し、当該タレントを出演させないよう働きかけるなどの「妨害行為」を行ったケースがある、と報じています。仮にこのような報道の中に、事実と認定されるようなケースがあったとしたら、憲法が定めた「職業選択の自由」に抵触した可能性があります。
一方で、芸能事務所の立場に立つと、「多額の投資を行ってタレントを育成した後、投資資金を回収する時期になって、独立や移籍をされたらかなわない。」という事情があることも良く理解できます。その解決のためには、国などが主導して、タレント、芸能事務所の双方が納得できる「所属タレントの独立・移動に関する業界標準のルール」の策定を促すことが必要ではないか、と考えられます。
4.所属タレント等に対する「ハラスメント」に相当する行為
一部のメディアは、過去に経営者などが所属タレントに対して、セクシャル・ハラスメントに相当する行為をしていた事務所がある、と報じています。また真偽は不明ながら、「所属事務所の経営者から、性的関係を要求された。」といったタレントのコメントが掲載された書籍等も出版されています。仮にそのような報道の中に、事実と認められるものがあったとしたら、一般企業等と同様に、タレントを各種ハラスメントから保護、救済するための制度創りが必要だと感じます。
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