米国の州選挙管理当局者らは、7月にイリノイ州とアリゾナ州で、選挙登録者データベースが不正アクセスされたのを受け、選挙用コンピューターシステムの安全性確保に躍起になっている。米連邦捜査局(FBI)は、国外のハッカーが2州のデータベースに侵入したと述べた。11月の大統領選がどれほどサイバー攻撃に脆弱なのかが懸念されている。
■何が起きたのか?
イリノイ州の事例では、最大20万人に上る有権者のデータが流出した。
先に起きた米民主党全国委員会幹部のメール流出事件でロシアのハッカー集団の関与が疑われていることから、米当局は今回のサイバー攻撃でもロシアとの関連性を調べている。だが、ロシアの正式な関与については結論が出ていないという。
当局では、選挙結果を操作しようとする組織や政府と同じほど、ハッカーが選挙登録者情報に興味を持っていたのかもしれないともみている。
■全て「ブッシュ対ゴア」の落ち度か
「フロリダの数え直し事件」を覚えているだろうか。ブッシュ前大統領とゴア元副大統領が争った2000年の大統領選で、フロリダ州のパンチ式投票機が投票結果を正しく認識せず、大混乱が起きた事件だ。この一件を受け、多くの州が新しい投票機を導入した。
以来、安全性の調査官らは、そうした機械はほぼ全てがサイバー攻撃に脆弱だと定期的に実証してきた。ハッカーたちは有権者名簿を書き換えることが可能だ――。そんな潜在的脅威が今回のイリノイ州とアリゾナ州の事例で高まった。ハッカーたちは投票機自体も操作してしまう可能性がある。投票用紙を改ざんしたり、投票結果の集計機に侵入したりするかもしれない。
選挙管理の込み入った仕組みも、状況を一層複雑にしている。各州にはそれぞれの規則があるが、多くの場合、郡や市もどういう技術や手続きを採るかを独自に決めているからだ。調査官らによると、最も脆弱なのは、いわゆる直接記録式(DRE)と呼ばれる投票機だ。タッチスクリーン式なので投票用紙が残らない。不正侵入されても、選挙管理当局が発見するのは非常に難しいだろう。コンピューター科学者で投票機技術の専門家のアンドリュー・アッペル氏は、DRE機を「致命的欠陥のある技術」と呼んでいる。