福島県の帰還困難区域の除染「地域とよく相談して」

福島県の帰還困難区域の除染「地域とよく相談して」
環境省の伊藤副大臣は、来年度予算案の概算要求で、初めて項目として盛り込んだ福島県の帰還困難区域の除染について、「地域とよく相談し、寄り添う気持ちでやっていきたい」と述べ、具体的な事業の内容について、地元自治体などと協議を進める考えを示しました。
環境省は、来年度予算案の概算要求を31日発表し、原発事故の影響で長期間、住民が戻るのが難しい福島県の帰還困難区域の復興に必要な、除染などの費用を初めて項目として盛り込みました。
これについて、環境省の伊藤副大臣は31日の記者会見で「帰還困難区域の除染とインフラ整備が極めて重要だということが自民党の提言でも出ている。これを大切にして、地域とよく相談して寄り添う気持ちでやっていきたい」と述べました。
そのうえで、復興拠点を設けて除染とインフラ整備を一体的に進めることについては、「地域の声を集約した形でどうするのか検討しなければならない。よく耳を傾けながらやりたい」と述べ、来年度に向け、除染を行う地域など具体的な事業の内容について、地元自治体や関係省庁と協議していく考えを示しました。
東京電力福島第一原子力発電所の事故で、政府は福島県内の11の市町村に避難区域を設定したうえで、放射線量によって、避難指示解除準備区域、居住制限区域、それに帰還困難区域の3つに分けています。
このうち、1時間当たりの放射線量から年間の放射線量が20ミリシーベルト以下となるのが確実で、住民の早期帰還を目指しているのが避難指示解除準備区域、20ミリシーベルトを超えるおそれのある地域が居住制限区域で、いずれも日中は立ち入りが可能なうえ、許可を得たうえで、帰還に向けた準備のために宿泊できる地域もあります。
この2つの区域について、環境省は原発事故以降、住宅や農地を中心に除染を進めていて、現在も4つの市町村で除染が続いていますが、来年3月までの作業の終了を目指しています。
そのうえで政府は、商業施設や医療機関などの生活基盤を整えて、2つの区域の避難指示をすべて解除する方針です。

一方、放射線量が20ミリシーベルトを下回らず長期間、住民が戻るのが難しい帰還困難区域は、浪江町と双葉町、それに大熊町など7つの市町村にありますが、これまで復興や除染に関する具体的な方針は示されておらず、除染が終わったのは、復興工事などで使われる一部の国道や警察署などのほか、除染の効果を確かめるために試験的に行った浪江町と双葉町の一部にとどまっていました。
31日に政府が決定した復興に関する方針では、帰還困難区域の中に「復興拠点」を設け、周辺の除染やインフラの整備を一体的に進めたうえで5年後の平成33年度末をめどに、一部で避難指示を解除するとしています。
環境省は、来年度予算案の概算要求に除染などの費用を初めて項目に盛り込んでいて、今後、除染を行う地域や具体的な予算額などについて地元の自治体や関係省庁と協議を進める方針です。
今回の方針を受けて、帰還困難区域の復興に向けた除染作業が本格化する見通しです。