共働きだった両親がでかけると僕は、妹に赤いキティーちゃんの合羽を着せる。ピンク色したミッフィーちゃんの長靴も履かせる。
「どこ行くの?」妹が言う。
「ゲームセンターだよ」僕は答える。
「すごい雨と風だよ」妹はしかめ面する。
「一人で留守番してるか?」僕は言う。
妹は、首を振り僕の腕にしがみつく。テーブルの上に置いてあった昼食代の200円を半ズボンのポケットに突っ込んでドアを開ける。
朝なのに暗い。木の葉や枝がビュンビュン飛んでくる。僕は雨風に逆らって妹の手を繋ぎ歩く。頭の中でゲームの電子音がしてる。
1980年代のゲームセンターに僕は入り浸っていた。幼稚園の頃から通っていたのだ。両親が共働きで、よいこともたまにあるのだ。
ひなびた商店街に着くと100円分の駄菓子を妹に買う。僕は100円でゲームを2回プレイした。妹がたまにやらせてくれと、言う。
すぐに死ぬので殆どやらせないのだが、5回に1回位はやらせる。駄菓子をちょっともらうためと、ゲーム共犯者の意識付けもある。
ゲームセンターの電子音を聴いていると、心が落ち着く。妹が帰りたいと言い出すと僕は家に帰る。家に帰って、テレビをつける。
あなたの知らない世界、がやっている。妹は見たくないと言う。僕は「妹君、そこをなんとか頼むよ、お願いしますっ」と言う。
妹は笑顔で僕の膝の上に乗り
「しょうがないな、お兄ちゃんは」と言う
怖い場面になると妹の体をギュッと抱く。
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