来年度予算案の概算要求 101兆円台の見通し

来年度予算案の概算要求 101兆円台の見通し
国の来年度予算案の概算要求が、31日に各省庁から財務省に提出され、高齢化で医療や介護などの「社会保障費」がさらに膨らむことから、一般会計の総額は3年連続で100兆円の大台を突破し、101兆円台となる見通しです。
来年度(平成29年度)予算案の概算要求は、31日に各省庁から財務省に提出されました。財務省では、提出された概算要求のデータを担当者が早速確認していました。

各省庁のうち要求額が最も大きいのは厚生労働省で、高齢化で医療や介護、年金などに充てる「社会保障費」がさらに膨らむことから31兆1217億円に上ります。
また、総務省が地方自治体に配分する地方交付税などとして16兆6743億円、国土交通省が公共事業費などとして6兆6654億円を要求しました。さらに、防衛省は北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応を強化するため、イージス艦に搭載する、より能力の高い迎撃ミサイルを取得する費用など、過去最大の5兆1685億円を要求しました。
このほか、国債の償還や利払いに充てる「国債費」の要求額は24兆6174億円に上ります。
この結果、来年度予算案の概算要求は、一般会計の総額で3年連続で100兆円の大台を突破し、101兆円台となる見通しです。
日本の財政は、政策の実施に必要な経費を税収で賄えず、国の借金が1000兆円を超えても、なお膨らみ続ける厳しい状況にあるだけに、財政の健全化と経済の底上げにつながる予算案を編成していけるかが課題となります。

各省庁が提出した主な事業

国土交通省は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを見据えて、羽田空港の発着枠の増加につながる施設の整備や、国内線と国際線のターミナルを車で移動する際の利便性を高めるトンネルの整備費などとして613億円を要求しました。

環境省は、国立公園に多くの外国人旅行者に訪れてもらおうと、公園の整備や観光ガイドの育成費として101億円を要求しました。

総務省は、地域の活性化に向け、お年寄りの買い物を支援する取り組みや都市部の学生などに、働きながら地域の暮らしを体験してもらう取り組みを行う自治体への支援策として12億5000万円を要求しました。

また外務省は、先月バングラデシュで日本人7人が犠牲になった人質事件を受けて、海外の日本人学校の安全対策の強化やテロ対策の一環として偽造しにくい新たなパスポートを開発する費用などに391億円を要求しました。

警察庁は、企業などを標的にしたサイバー攻撃に備え、警察大学校に攻撃に対処する訓練設備を導入する費用として8億6000万円を要求しました。

盛り込まれた身近な事業

来年度予算案の概算要求には、住宅のリフォームや教育、介護、子育てなど暮らしに身近な事業も盛りこまれています。

【住宅支援】
国土交通省は、住宅の耐震性や省エネ性能を高めるリフォーム工事を対象に、1戸あたり最大で250万円を補助する費用として45億円を盛り込みました。
また、高齢化や人口減少で増え続ける空き家や空き地を有効に活用できるよう、全国各地の情報を検索できるシステムの整備費などとして、1億4000万円を要求しました。

【奨学金事業の充実】
若者への支援策として奨学金の拡充も盛り込まれています。
文部科学省は、無利子で貸し出す奨学金について2万4000人分増やすため155億6500万円を要求しました。そのうえで、所得の低い家庭の学生については、成績の基準を実質的に撤廃し、無利子の奨学金を利用しやすくすることも要求しました。
また、子どもが私立の小中学校などに通っている世帯への支援として、年収590万円未満の家庭を対象に、授業料の負担を軽減する費用として13億円を要求しました。

【年金 子育て 介護】
厚生労働省などは、待機児童の解消に向けて、来年度末までに50万人分の保育の受け皿を確保するため、保育所の整備費などとして712億円を要求しました。
また、子育てや介護の人材を確保するため保育士の賃金を2%程度、介護の職員の賃金を平均で月1万円程度、来年度から引き上げることも盛り込みました。
さらに、年金を受け取れない人を減らすため、年金の受給資格が得られる加入期間を今の25年から10年に短縮する費用も要求しました。
ただ、保育士・介護職員の賃上げや年金をもらえない人を減らすための対策に必要な財源は、現時点でめどが立っておらず、厳しい財政事情の中で、どのようにして財源を捻出していくのかが、年末にかけた予算編成で焦点となります。