ここから本文です

宅飲み用日本酒、これは絶対「買っちゃダメ」

東洋経済オンライン 8月27日(土)9時0分配信

おいしいお酒を選ぶのに、お酒に詳しくなる必要はまったくない――。
ソムリエ兼酒匠(さかしょう)兼バーテンダーという「お酒のプロ」でありながら、そう断言する山口直樹氏。『世界で一番わかりやすい おいしいお酒の選び方』の著者でもある山口氏が、宅飲み用日本酒を選ぶ際の注意点を語ります!  

 雰囲気のいいお店で飲む日本酒はもちろん、家でゆっくり、1人でテレビを見ながら、または誰かと語らいながら飲む日本酒も格別です。日本酒は、ごく普段の夕食にもマッチする……いや、普段の食事をもっとおいしくしてくれるお酒。焼き魚やおひたし、肉じゃがにワインは合いませんからね。

 でも、どこで買うのか、どのお酒を買うのかは、ワイン以上に慎重になっていただきたい側面があるのです。そこで今回は、失敗しない宅飲み用日本酒の選び方をご紹介していきましょう。

■ 家で飲む日本酒は「買ってはダメ」を避けることから

 日本酒はお店によって品揃えがまったく違います。コンビニや小さなスーパーでは、まだまだ申し訳程度に「酔えればいい系」の日本酒しか置いていない店のほうが多いのが実情。ですから、できるかぎりお酒選びのプロがいる酒屋を探して、足を運んでください。

昔ながらの街の酒屋や大手スーパーが運営しているリカーショップなど、お酒選びを相談できる人がいて、かつ品揃えのいいお店が理想的です。そして、店員さんに「自分が好きな日本酒のタイブ」を伝えればOK(自分のタイプがわからない方は拙著『世界で一番わかりやすい おいしいお酒の選び方』をお読みいただければすぐわかります)。 では、もし日本酒に詳しい店員さんがいないお店で買わなければいけないときはどうするか?  そんなときは、「買ってはいけないもの」を避け、「大失敗」を防ぐことが大切になります。

「米の名前」をでかでか書いてあるお酒はアウト

 まず、1000円前後の日本酒を買うなら、造りとコストが見合っていない「純米大吟醸」「大吟醸」は買わないほうが吉。そのコストで「大吟醸」を出すためには、ほかのところで無理にコストを削っている可能性が非常に高いからです。ここは逆に、あえて精米歩合(米の削り度合い)が高くないものを選ぶという、ツウな戦略をとりましょう。

 また、「ラベルに米の名前をでかでかと掲げているお酒」もアウト。米頼みということは、つくりにはこだわっていない可能性が高いからです。それよりは、お米の名前はわからずとも、「生酛造り本醸造熟成生原酒」などのように「どのようにつくられたか」を堂々とアピールしているほうが、よっぽど信頼できるんですね。

 あとは経験上(やや偏見も入っていますが)、とくに「山田錦」推しの日本酒は「山田錦って言っておけばいいんでしょ!」感があります。

 もうひとつ、「値段の安い灘、伏見のお酒」も避けましょう。日本酒の名産地である灘(兵庫)と伏見(京都)は、ワインにおけるフランスのような、位の高い場所。予算が限られているなら、フランスワインよりチリワインの方が当たりが多いのと同じで、日本酒も灘、伏見のような「フランス」を避け、北陸や東北の普通酒を選んだほうが、コストパフォーマンスがいいのです(「吉乃川」など)。

 今日はどうしても酒屋に行けそうにないという日は、ズバリ、「八海山」「吉乃川」「玉乃光」です!  これならまず失敗はない、とオススメできますし、かつスーパーとコンビニでもよく見かける3銘柄です(玉乃光は伏見のお酒ではありますが、値段も手ごろで、例外的にオススメです)。

■ 賞は言わば「F1レース」、一般人は無視しよう

 酒屋に行くと、「○○賞受賞」と書かれた日本酒をよく目にしますよね。でも、日本酒の賞は、まったく無視して構わない要素です。なぜか。日本酒の賞レースは、F1レースのようなものだからです。杜氏の技術を競う会、「超絶玄人による腕試しの場」なんですね。

 いくらサーキットで速く走れても、公道では乗り心地が悪いですし、すぐに飽きてしまいます。自分が乗るなら、それよりプリウスやデミオ、高級路線でもレクサスといった、みんなが楽しく安全に乗れるように設計された車がいいはずです。

 日本酒も同じで、杜氏の腕を競う味と、市販のお酒では、目指すところがまったく違います。言ってしまえば、賞レースは「米からここまでフルーティな香りが出るよ!」というウルトラCを競う大会なんです。食事と合わせることを最優先に考えるのであれば、むしろ「○○賞」は避けたほうがいいとさえ言えるでしょう。

1/2ページ

最終更新:8月27日(土)9時0分

東洋経済オンライン

東洋経済オンラインの前後の記事

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

現代奴隷の目撃写真
この2年あまり写真家のリサ・クリスティンは世界中を旅して、我慢できないほど過酷な現代の奴隷の現実を記録してきました。彼女はガーナの鉱夫やネパールでレンガを運び出す人々等、心に残る写真を紹介しながら、世界中で奴隷扱いされる2千7百万人に上る人々の窮状を訴えます。