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リスク「確実」 肺がん発症1.3倍

 国立がん研究センターは31日、たばこを吸わない日本人の受動喫煙による肺がんのリスクは、受動喫煙のない人に比べて約1.3倍高いとの解析結果を発表した。これを踏まえ、同センターは肺がんに対する受動喫煙のリスク評価を「ほぼ確実」から、全がんに対する飲酒や喫煙、肝がんに対する肝炎ウイルスなどと同じ「確実」に格上げした。

 他人のたばこの煙を吸う受動喫煙は、循環器や呼吸器の病気、乳幼児突然死症候群にも影響することが分かっている。同センターの片野田耕太・がん登録統計室長は「世界の49カ国が公共の場所の屋内を全面禁煙にしており、日本でも屋内の喫煙を禁止する法制化が必要だ」と指摘する。

 喫煙習慣は肺や食道などさまざまながんリスクを高めることが明らかになっており、がんによる死亡のうち男性の40%、女性の5%は喫煙が原因と考えられている。しかし、受動喫煙については、ほとんどの研究で肺がんリスクの上昇を示すものの、統計学的な関連性は明確になっていなかった。

 同センターは、日本人の受動喫煙と肺がんの関連を報告した426本の論文のうち、非喫煙者の女性の肺がん発症と夫の喫煙状況を調べた研究など1984〜2013年に発表された9本を統合して解析した。この結果、家庭内で受動喫煙がある人は、ない人に比べて肺がんになるリスクが1.3倍高くなり、海外の解析結果と同様だった。

 同センターはホームページや冊子で、科学的根拠に基づく「日本人のためのがん予防法」をまとめているが、喫煙については「吸わない。他人のたばこの煙を避ける」と明記し、これまでの「できるだけ避ける」との表現を改める。【下桐実雅子】

法制化の動き後押し 東京五輪を視野

 他人の喫煙によって肺がんのリスクが高まるという日本人の研究結果が示された。厚生労働省によると、受動喫煙が原因の死者は世界で推計年間60万人、国内でも1万5000人以上。公共の場での屋内喫煙を法律で禁じる国も多いが、日本は受動喫煙防止対策が努力義務にとどまる。今回の結果は、2020年東京五輪を控えて法制化を求める動きを後押ししそうだ。

 受動喫煙と肺がんとの関連は1981年に初めて報告され、国際がん研究機関(IARC)は04年、環境中のたばこの煙を「ヒトに対し発がん性がある」と結論付けた。日本も批准する世界保健機関(WHO)のたばこ規制枠組み条約も各国に受動喫煙対策を求めており、規制の緩い日本は15年のWHO報告書で最低レベルとされていた。

 国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「一人一人が他人の煙を避けるように行動してほしい」と指摘するとともに、五輪に向け「分煙ではなく、室内での完全禁煙を進めるべきだ。吸わない人がたばこの害を受けない、たばこをやめたい人がやめられる環境が必要だ」と訴える。

 海外では受動喫煙防止の法制化で、心臓病や脳卒中、ぜんそくなどの病気が減ったというデータも出ている。過去の五輪開催地では罰則付きの対策が講じられている。国内でも内閣官房や財務省、厚労省を中心としたチームが公共施設や飲食店などを対象に罰則を伴う新法を検討しており、遅れていた対策が進むのか注目される。【下桐実雅子、野田武】

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