またとんでもない作品に出会ってしまった。
しかも飼っているのは成虫ではなく芋虫である。ひー!
これだけ読むと、完全に問題のある今すぐにもクビになりそうな人に見えるのだが、なんと会社で受け入れられるのだ。それどころか、机の中じゃなくて机の上で飼えるんじゃないですか?と勧められる。もちろん「おかしい!会社で虫飼うとか絶対変!反対!!」という意見も出る(さっきの紙面キャプチャで叫んでいた新入社員の男性です)のだが、「お前が言うな」「会社で米炊く奴が何を抜かす」と、あっさり却下。めでたく麻生さんは机の上で芋虫を飼う会社生活を始める。
この第0話を皮切りに、本作では、麻生さんwith虫が、様々な周囲の人を巻き込みながら、20話も納められている。このぶっとんだ設定だけみるとハチャメチャなテンション高めのギャグマンガなのかな?と思われるかもしれない。しかし、実際は終始おだやかで日常系マンガの枠といってもいい。とても読みやすくスイスイとページをめくれるだろう。
だが、本作の魅力はそれだけにとどまらず、「多様性」を描いた社会派的な側面も持っていることも挙げられる。
物語の中では、麻生さんの虫好きを始めとして、上司の仕事のやり方に不満を持つ人や、気の合わない人との仕事などの「拒否反応」を示すシーンがちりばめられている。しかし、最終的には、みんなそれぞれの形で受け入れていく。
その象徴とも言えるシーンが麻生さんが虫を飼っていることに反対する総務の人への切り返しだ。
忘れてはいけないのは、麻生さんがこんなに会社で受け入れられているのは、彼女が割と重めの仕事のディレクションを任されるほど「仕事ができるから」なのだ。仕事という義務を果たしていないのに、好みという私的欲求が許容されることはないが、義務を果たしている人には寛容になることで離職防止になる。ということで、この作品はもしかしたら人事になりたての人向きなのかもしれない。
もちろん虫にまつわる雑学的なエピソードも沢山描かれている。作者は格別虫フェチというわけでなく、本作を描くにあたって色々と調べまくったようだ。しかし描いているうちに「キアゲハ幼虫はムチムチ感がいいなー」とか言っているので、元々素養があったのではないだろうか。そう思えるほど、虫にまつわる箇所は楽しげだ。
惜しむらくは、本作は表紙に「1巻」と記載があるものの、打ち切りで続刊がないことだ。虫は得意じゃないけど、もっと読みたかったなぁ。
ライトな切り口の中身はぎっしり。
読むと思考が”変態”する作品。
オススメです。
※本記事、ちょっと釣りタイトルになってしまいましたが、下記の1と考えていただけると幸いです。
へん‐たい【変態】[名](スル)
1 形や状態を変えること。また、その形や状態。
2 普通の状態と違うこと。異常な、または病的な状態。
3 性的倒錯があって、性行動が普通とは変わっている状態。変態性欲。
4 動物で、幼生から成体になる過程で形態を変えること。おたまじゃくしがカエルに、蛹 (さなぎ) がチョウになるなど。
5 植物で、根・茎・葉などが本来の形から変化し、著しく異なる形態をとること。葉がとげとなるなど。
6 同じ化学組成で物理的性質の異なる物質の状態。温度変化などによって生じることが多い。単体の場合には同素体という。転位。
(出典:デジタル大辞泉)
昆虫食のアンソロジー。
もしもファーブルが美少女だったら…というお話。
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