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夏休み明け 子供の命を守るために

 悲痛な最後の訴えに、胸が張り裂けそうになる。

     青森県内のJR駅の線路上で今月25日、青森市立中2年の女子生徒(13)が列車にはねられて死亡した。飛び込み自殺したとみられる。生徒がスマホのメモに記した「遺書」には、こんな言葉が残されていた。

     「ストレスでもう生きていけそうにないです」「もう、二度といじめたりしないでください」「家族へ。先立つ不幸(不孝)を許してください。もう無理です」「生きる価値本当にないし」……。

     なぜ、女子生徒はここまで追い詰められてしまったのか。家族によると、校内の複数の生徒から無料通信アプリ「LINE(ライン)」で中傷を受けていたという。

     いじめの実態は今後、学校などで詳細に調査しなくてはならない。同時にネットを通じたいじめが後を絶たないことを再認識すべきだろう。ラインでメッセージが送られた直後に返信しなければ、たちまちいじめの対象になるのは日常的なことだと言われる。状況は深刻だ。

     もう一つ、重要なのは女子生徒が死亡したのが2学期の始業式翌日だった点だ。女子生徒をいじめている生徒と顔を合わせるのがつらくて苦しかったのかもしれない。

     内閣府の自殺対策白書によると、1972〜2013年の42年間で18歳以下の子供の自殺は1万8048人。日付別では9月1日が131人と突出しており、その前後の日も多かった。夏休み明けに自殺が急増する傾向があるのは明らかだ。

     自殺の理由は、いじめだけではない。学校の成績などさまざまな不安を抱える子供にとって、長い休みを終えて再び学校に通うのは大人が想像する以上に重荷となる。

     スマホの普及をはじめ子供をめぐる環境が大きく変化する中で文部科学省もネット上に自殺をほのめかす書き込みがないかチェックするなどの夏休み明け対策を全国の教育委員会に要請している。一方、各地のNPOでは登校したくない子供を緊急的に受け入れたり、電話相談に応じたりする取り組みを始めている。

     NPO関係者は「子供たちは学校に行きたくなくても、親や先生にしかられそうだから相談もできず、孤独感を深めていく」と指摘する。そして多くのNPOが今、「学校以外にも君たちの居場所はある」「我慢しないで話を聞かせてほしい」と子供たちに呼びかけている。

     あすから多くの学校で2学期が始まる。夏休み明けの子供の変化に気を配り、SOSのサインに早く気づくためにはどうするか。親や教師だけでなく社会全体で子供の命を守るという発想に切り替えたい。

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