一つ疑問が残る点は、李記者が特別監察官と電話で話した直後、他の記者たちとその内容を共有するために作成したメモが、いかなる経緯を経て当事者の同意なしに流出し、あるテレビ局にまで流れたのかという点だ。誰か力のある人間がメモを入手し、テレビ局に提供した可能性も指摘されているが、これを確認する手立てはない。また李碩洙・特別監察官の携帯電話もすでに押収され、問題の通話内容に関するメモも確保されているはずだが、その上でなぜ取材記者の携帯電話まで押収する必要があるのかも理解できない。これら一連の対応はどう考えても過剰であることから、検察の家宅捜索には何か別の意図があると考えざるを得ない。
ちなみに李碩洙・特別監察官は朝鮮日報社以外の他の取材記者からも電話取材を受けていたという。また今この瞬間にも多くの取材記者が検察はもちろん、何人もの政府関係者に取材を行っているはずだ。その中で李明振記者による電話取材がそれらと違う点があるとすれば、朝鮮日報社が朴槿恵(パク・クンヘ)大統領お気に入りの禹秘書官に注目し、その妻の実家が所有する江南の土地をめぐる疑惑について最初に報じた点くらいしかない。
この報道は先月逮捕されたチン・ギョンジュン検事長の問題に端を発するものだ。チン・ギョンジュン前検事長はネクスンから賄賂を受け取り、株の売却益などで126億ウォン(約11億5000万円)もの不当な利益を手にしたとしてすでに逮捕されているが、チン氏がどのような経緯で大統領府民政主席室の検証を逃れたかという素朴な疑問は今なお残っている。このように権力側が嫌がる報道をしたことを理由に、取材記者に対して家宅捜索を行うという行為は、メディアを敵対視していた左派政権の時代にもなかったことだ。この事件は権力とメディアとの関係をめぐる重大なあしき前例として、今後も長く語り継がれるようになるだろう。
先進国では政府高官の不正をめぐる取材を問題視し、捜査機関が記者の携帯電話を押収するなど絶対にあり得ないことだ。ところが今、韓国社会では大統領の秘書と関係する土地関連の疑惑を報じただけで、メディアが検察から捜査を受けている。この国の時計は今完全に逆回転をしているのだろうか。