世界遺産推薦取り下げへ イコモスの指摘受け
日本が今年の世界文化遺産登録を目指している「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」(長崎、熊本県)について、政府が国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦をいったん取り下げて再提出する方針を固めたことが分かった。ユネスコの諮問機関から1月に推薦書の見直しを求められたため。推薦書の再提出が今年の審査に間に合わない場合、2018年以降の登録を目指すことになる。
文化庁などによると、今年の登録スケジュールはユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が5〜6月ごろ、各国の推薦案件について登録の可否を勧告。これを受けて7月にトルコで開催予定のユネスコ世界遺産委員会で決定する予定。
長崎の教会群は、16〜19世紀のキリスト教伝来と信仰の歴史を示す資産で▽現存する国内最古のキリスト教会で国宝の大浦天主堂(長崎市)▽「島原の乱」の舞台となった原城跡(長崎県南島原市)▽禁教下に潜伏キリシタンが信仰を守った「天草の崎津集落」(熊本県天草市)−−など14件で構成する。
日本側は「16世紀以来の東西交流の中で生まれた文化的伝統を物語る顕著な物証だ」と普遍的価値を強調していた。しかし、昨年9〜10月に現地調査をしたイコモス側から今年1月下旬、中間報告として「『禁教期』との関わりに重点を置くべきではないか」と見直しを求める趣旨の指摘があったという。
この中間報告は、これまで非公開だったイコモスの審査の透明性を高めるために今年の審査から実施されるようになった。推薦を取り下げて5月の勧告に再提出が間に合わなかった場合、17年はすでに福岡県の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」の推薦が決まっているため、登録は18年以降を目指すことになる。
推薦は各国で年1件。長崎の教会群は15年の登録が目指されたが、内閣官房が推す「明治日本の産業革命遺産」と競合し「産業革命遺産」が先に推薦されて登録が決まった。長崎の教会群は16年登録を目指し、15年1月に推薦を閣議了解した。【三木陽介】