[PR]

 作家の百田尚樹氏が昨年5月に福岡市内で開いた講演会に、同市と市教委が名義後援していたことが11日わかった。市は、今夏にあった戦争展で、主催した市民団体の関係者が特定の主義主張に偏っているとして名義後援を断っている。

 11日の市議会一般質問で中山郁美議員(共産)が百田氏の講演会を市が名義後援したと指摘。その上で戦争展のときと判断が分かれた理由を質問した。

 市によると、講演会のテーマは百田氏の人気小説にちなみ「『永遠の0』から日本人の心を問う」。昨年2月に依頼を受け、要綱に照らして検討し、「市民文化の振興に資する」と判断したという。この講演会には市教委も名義後援しており、担当者は「作品についての講演を行うという内容だったため問題ない」と話す。

 後援の申請があった直前、百田氏は東京都知事選の候補者の応援演説で「東京裁判は大虐殺をごまかすための裁判だった」などと述べて反響を呼んだ。

 市は今年2月に後援申請を受けた「平和のための戦争展」では「展示される漫画が反原発に偏っている」「記念講演する大学教授が反原発の立場」などの理由で名義後援をしなかった。中山議員は「極めて不平等な扱いだ」と批判した。

 戦争展での判断は市総務企画局が担い、百田氏の講演会についての判断は同市経済観光文化局が担ったという。同局は取材に「ことさらに(百田氏の)過去の発言などを調べることはなかった」とし、「講演会をあくまで文化事業として適切かどうかをみた結果だ」と説明している。