亡き曽祖父へ「家族守る」…献花者の高3
71回目の終戦記念日を迎えた。日本が平和を享受してきた71年間は、いとしい肉親や家族を戦争に奪われた人たちにとっては、苦労や悲しみとともに生き抜いた長い時間でもある。優しかった夫、一家を支え続けた父……。記憶や思い出を紡ぎながら、今年も遺族たちが追悼式会場の日本武道館(東京都千代田区)に集った。
式壇への献花者の一人に選ばれた熊本県宇土市の森田裕也さん(17)は、県立小川工業高の3年生。戦死した曽祖父市喜(いちき)さんの話は、一緒に参列した祖父義満さん(80)から繰り返し聞いてきたので、今も「亡くなった人という気がしない」という。
1945年3月、市喜さんの乗った輸送船は、フィリピンに向かう途中の東シナ海で魚雷に沈められた。その年の初め、出征する市喜さんは、列車の窓から顔を出して義満さんに告げた。「(5人きょうだいの)長男だから、弟のことも頼むけん。お母さんの言うことをよく聞いて」。妹と2人兄妹の裕也さんは、曽祖父を遺影でしか見たことがないが、その言葉が時折頭に浮かぶという。
将来は福祉関係の仕事に就きたいと思っている。4月の熊本地震では自宅は無事で、すぐに近所のお年寄りの安否確認をして回った。
「しっかりしなきゃと思っています。僕も家族を守っていくから安心して」。花をささげながら、心の中で伝えた。【熊谷豪】