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[FT]オーストラリアの幸運は尽きるのか

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2016/8/29 6:30
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 心配性のオーストラリア人は、おそらく今は中国の報道やソーシャルメディアを読むことを避けたほうがいいだろう。南シナ海とリオデジャネイロオリンピックをめぐる緊張が重なり、オーストラリアは中国のナショナリストたちの罵詈雑言(ばりぞうごん)の標的になっているからだ。

■米に向けた中国の「怒りの避雷針」と化す恐れ

オーストラリアは中国との経済関係強化によって恩恵を受けてきた(シドニーの港を出る中国のコンテナ船)=ロイター

オーストラリアは中国との経済関係強化によって恩恵を受けてきた(シドニーの港を出る中国のコンテナ船)=ロイター

 現在の問題は7月、国際仲裁裁判所が南シナ海の大半に関する中国の領有権主張について、中国にとって不利な判決を下したことで始まった。米国、日本とともに、オーストラリアは中国に判決を尊重するよう求めた。

 北京の反応はすさまじかった。中国共産党の機関紙「人民日報」系のナショナリスト的な新聞「環球時報」は、オーストラリアの「錯乱した」判決への反応を批判したうえで、「中国は報復しなければならない・・・もしオーストラリアが南シナ海の海域に踏み込んだら、警告して攻撃する理想的な標的になる」と論じた。

 オリンピックのプールさえ、係争水域になった。オーストラリアの競泳選手、マック・ホートンが中国のライバル、孫揚を「薬物使用者」と呼んだとき、中国メディアは「人種差別主義」で「野蛮」なオーストラリア人に向けた罵り言葉で燃え上がった。

 たわいない夏物語として片付けるべきではない。その重要性は豪中関係の枠を超えて広がった。これらの出来事は、台頭する中国と西側の間の大きな緊張を物語っている。中国国民は一世代以上にわたり、中国が外国に味わわされた「屈辱の世紀」を強調する政府公認の歴史を教え込まれてきた。西側がまだ中国に陰謀を企てているという考えは、広く受け入れられている。

 アジア太平洋地域の端に位置し、西側の同盟の前哨基地となっているオーストラリアは、全般的に西側、特に米国に向けられる中国の怒りの避雷針と化す恐れがある。

 数十年にわたり、オーストラリアは「ラッキーカントリー(幸運な国)」として知られてきた。およそ2400万人の国民が、太陽の降り注ぎ、鉱物資源に恵まれた大陸を独り占めしている。しかも、広大な海によって世界の紛争地域から切り離されてきた。

 だが、オーストラリアの歴史的な幸運は、友好的な国々が大海を支配していることに依存する面もあった。「ブリタニア(英国を擬人化した女神)」が大海原を支配していたとき、オーストラリアは大英帝国に属していた。1945年以降は米国海軍が太平洋を支配した。

 しかし、もし南シナ海と太平洋全体が係争海域になったら、オーストラリアは潜在的に難しい選択を迫られる。いずれ中国がアジア太平洋地域を支配するという考えに適応すべきなのか。それとも、似たような考えを持つ伝統的な同盟国、米国が支配を続けるほうに賭けるべきなのか。

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