外交加速 英EU離脱受け、加盟国橋渡し
【ブリュッセル八田浩輔、ウィーン三木幸治】ドイツのメルケル首相が欧州連合(EU)加盟国首脳との会談をハイペースで重ねている。国民投票で離脱を決めた英国を除く27加盟国が集まる9月半ばの非公式会議を控え、今月22日の仏伊首脳との会談を皮切りに27日までに15カ国の首脳と協議。EUの盟主として、思惑や立場の異なる加盟国の橋渡し役を担う。
「英国の離脱は欧州統合の歴史の転換点となる」。メルケル氏は26日、訪問先のワルシャワでポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの中東欧4カ国首脳と会談。その後の共同記者会見で危機感をにじませた。4カ国はEUの難民受け入れ政策の見直しを求めており、メルケル氏との認識の違いが浮き彫りとなっている。
メルケル氏は英国の離脱決定後、EU加盟国間の意見の相違に耳を傾け、政策決定を急ぐべきではないとの立場を強調している。中東欧諸国では独仏伊主導で今後のEUのあり方を巡る議論の方向性が定まることへの抵抗が強い。ワルシャワでの4首脳との会談は、中東欧諸国への配慮をアピールする狙いがある。
ハンガリーのオルバン首相はメルケル氏との共同会見で、難民対策の強化による治安の確保を最優先事項と位置づけた上で「EU軍を創設すべきだ」と訴えた。ポーランドのシドゥウォ、チェコのソボトカ両首相もこれを支持。EUの権限拡大には抵抗しつつ、安全保障面では協力して域外国境の管理強化を求めた。
独仏伊首脳はEU立て直しの取りかかりとして、若者の雇用対策など経済対策も柱の一つに位置づけたい方針だ。
◆メルケル独首相と協議した主な国◆
22日 仏、伊
26日 ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、デンマーク、フィンランド、オランダ
27日 オーストリア、ブルガリア、クロアチア、スロベニア