晩夏の候、私は私の藝を磨き、絵、写真、文章などが良い具合にカルチベートされ、身長が伸び、腹筋が割れ、目が二重になり、福耳で巨根、そんな新しい私に生まれ変わる為、しばしブログを休止して、旅に出る。探さないでくれ。男女問わず私はあなた方を心から愛している。抱きしめたい。鯖折りたい。問答無用でちゅーだ。
そう言い残してはてなを去ったのは、確か1ヶ月ほど前だったろうか。
思い返してみれば20代を社畜としてモラトリアムした私に夏休みのようなものはなく、わずかにあった休みも、社畜としてカルチベートされた私に旅行などの概念、出掛けるおぜぜは皆無、たまの休日は家の者とAEON MALLへ行き、プリキュアのゲーム機から流れるポッピーな音楽に合わせて呪詛の言葉をつぶやきながらバコバコ叩く、或いは、コーヒーと輸入食品のワンダーなショップをぐるぐると回って試飲を流し込み、この下らない人生を珈琲の黒とミルクの白でグレーにかき混ぜて誤魔化すしかなかったのだ。
しかし、家の者が実家に帰らせてもらいますと宣言したあの日、私の脳裏に過ぎったものは、当ブログのような非健康的で生産性のないゴミコンテンツは即刻中止して、夏休みをどこぞの大学生のようにきゃっきゃうふふと満喫する。そう、それだよ、私に足りなかったものは、くつわつわつわ。
転職によってホワイトな時間と、その時間によって歯医者に通い、ホワイトな歯を手に入れた私のホワイトな心は家の者がいないという事実を前にしてペイントイットブラック。まっくろくろすけだった。
そう、私が磨きたかったのは藝なんかではなく、ビキニ姿のお姉さんの背中をモイスチャージェルでだったのだ。
青い空、ソフトクリームの様な入道雲、グラニュー糖を一面に敷き詰めたような砂浜。ビキニ姿のお姉さんにグラニュー混じりの水を浴びせ、きゃっきゃうふふ。その後フード付きパーカを羽織り夕陽を見ながら醤油味のヌードルを召し上がる。夜、浴衣に着替えたお姉さんの横顔照らしたる蝋燭の火に、線香花火を近づけ、先に落ちたほうが負けねとキュートな八重歯見せたるお姉さんに、もう私の夏がオーバードライブ。ファズってラットがディストーション。ぽとりと落ちる線香花火に、夏の終わりと、恋の始まりを感じ、風で消える蝋燭、風と共に消える私達。嗚呼もう、アツがなっつなつ。ドキがむっねむね。
そんな夏休みを想像して、よだれを垂らし、えへへと白痴のような顔をしていたら、知らぬ間に私の夏休みが終わっていた。
食したペヤング、その数14。飲んだフルーツオレ、その数10。ゴミ出しの日が分からずに積み上がったそれらの箱の上に家の者が帰宅。廃墟と化した我が家、枯れた向日葵、浮いた金魚、私は土産のポップコーンがたっぷり入ったプーさんの蜂蜜壺でしばきまわされ、disられた。嗚呼、ディスニーランドはここにあったのか。
追いやられたベランダで秋の風に吹かれながら、煙草を喫む。
役目を終えた室外機。
雲に隠れたオリオン座。
私はどこにも行けなかった。
蝉はいつの間にか鳴くことをやめたが、私は再び鳴くことにした。
電子の砂漠の片隅で。
ウイヨース、ウイヨースと。