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【私説・論説室から】

「助け」のリレー

 小柄だった松田悠介さん(33)は中二の頃、壮絶ないじめに遭っていた。柔道部の同級生が毎休み時間やって来て、技をかける。「死んでしまいたい」とさえ思い詰めた。

 そんな時「どうしたら強くなるか一緒に考えよう」と声をかけてくれたのが体育の先生だった。先生は図書館で運動生理学、栄養学などを一緒に調べてくれた。毎朝六時半に学校のトレーニングルームを開け、体力作りにも付き合ってくれた。松田さんの身長は三年間で三十センチ伸びた。いじめはやんだ。

 この体験を通じ、体育の教員を志したが、いざ現場に入ると問題が見えてくる。二年で学校現場を離れ、米国留学した。そこで出会ったのが教育格差をなくそうと、優秀な人材を非常勤講師として二年間雇い、貧困地域の学校に派遣しているNPO「ティーチ・フォー・アメリカ(TFA)」。

 松田さんは六年前、TFAの日本版「ティーチ・フォー・ジャパン」を立ち上げた。青年海外協力隊やオリンピック選手のコーチなどさまざまな経歴を持つ社会人を教師として採用し、貧困率が高い地域の学校に派遣。子ども同士で徹底的に褒め合う授業、インターネット電話「スカイプ」で毎日、海外の人と交流する−。ある学校では学力テストの平均点が飛躍的に上がった。「生まれた環境にかかわらず全ての子どもの可能性が生かされる社会を作りたい」との思いだ。 (上坂修子)

 

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