THAAD配備反対派の間では「第2の丙子胡乱」という言葉まで出てきている。反対派たちは、韓国が米国に同調したことで、中国の報復を自ら招いたと主張している。明の肩を持ったがために、清の侵略を招いた失敗を繰り返したというわけだ。
なぜこれほどまでに、韓国は敗北主義を捨て去ることができないのだろうか。今や韓国は、丙子胡乱当時のような弱い国でも、御しやすい国でもない。380年前の朝鮮が頼りにしていたのは、滅亡したも同然の明しかなかった。今は韓米同盟があり、韓米日3カ国の協力体制がある。中国に対抗できる数多くのカードを手にしている。
韓国だけが中国の脅威を前に孤独な戦いを強いられているわけでもない。中国が他国と争っている場所は、南沙諸島もあり、尖閣諸島もある。中国が韓国に対して戦いを挑もうとすれば、すぐさま国際社会で孤立することになる。思うままに韓国に刃(やいば)を向けることはできない状況だ。
多くの人々が「第2のニンニク騒動」を懸念している。16年前、韓国は中国産ニンニクのために屈辱を味わった。当時、韓国が中国産ニンニクに対し緊急関税制度(セーフガード)を適用し、失敗に終わったのは、小貪大失(小を得ようとして、かえって大を失う)の判断ミスだった。だが、関税自体は世界貿易機関(WTO)の手続きに従った正当な措置だった。これに対し中国は、韓国製携帯電話の輸入中断という報復措置を講じた。国際的な通商ルールを無視し、力任せな行動に出たのだ。
この事件は韓国経済にとってトラウマになっている。だが再び、当時のように貿易をめぐって報復措置を講じられる可能性は低い。ニンニク騒動の当時、中国はWTOに加盟していなかった。しかし今では、中国はWTOに加盟し、市場経済国(先進国やWTOなどから「自由な市場経済を重視する国」と認定された国)の地位を得ようと苦心している。通商秩序に逆らうようなことは避けなければならない立場だ。