文/大西連(NPO法人「もやい」理事長)
NHK「貧困報道」の炎上
日本における「貧困」への無理解がまたも露呈する形となった。2016年8月18日にNHKがニュース番組で「子どもの貧困」問題を取り上げたところ、そこで名前と顔を出して発言した高校生に対するバッシングがネットなどで起きている。
また、参議院議員の片山さつき氏が自身のTwitterアカウントにおいて、ネットニュースのリンクを引用リツイートする形で、下記のように発言した。
「拝見した限り自宅の暮らし向きはつましい御様子ではありましたが、チケットやグッズ、ランチ節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょうからあれっと思い方も当然いらっしゃるでしょう。経済的理由で進学できないなら奨学金等各種政策で支援可能!」(https://twitter.com/katayama_s/status/766895331401347072)
「私は子ども食堂も見させていただいてますが、ご本人がツイッターで掲示なさったランチは一食千円以上。かなり大人的なオシャレなお店で普通の高校生のお弁当的な昼食とは全く違うので、これだけの注目となったのでしょうね。」(https://twitter.com/katayama_s/status/766986221893541888)
片山氏の過去のツイートを見ると、給付型奨学金の導入を進めるなど、子どもの貧困対策について具体的なアクションをおこなっており、必ずしも「貧困」に対して差別や偏見をもとにゴリゴリとバッシングをしようとする政治家とは思わない。
しかし、一方では、「チケットやグッズ、ランチ節約すれば……」「ご本人がツイッターで掲示なさったランチは一食千円以上」などを見ると、「貧困」──特に現代における先進国の「貧困」というもの──についての理解があるとは残念ながら思えない。
片山氏がツイートしたソースは、ネットの情報であって、本人の生活実態を反映したものとも限らなければ、粗暴に無遠慮にプライバシーを晒された露悪的な情報なのである。
自民党の役職等を歴任してきた片山氏がこういった発言をすることは、日本の貧困対策にとってマイナスになりかねない。
しかし、それも、「貧困」の定義や考え方が、個々人によって異なり、あまり共有されていないことによる不幸だとも思う。
メディアでも「貧困」について報道される機会が増え、大手メディアだけでなくwebメディアなどでも「貧困」に関する記事が掲載されることも多くなってきている。
あらためて、「貧困」について、特に日本(先進国)で一般的に言われるところの「貧困」について解説したいと思う。