先日、Kindle Unlimitedで無料の読み放題に加えられていたので、『外資系金融マンがわが子に教えたいお金と投資の本当の話』という本を読んでみました。
感想から先に言えば、ものすごくいい本でした。いい意味でタイトル詐欺(笑)。
たぶん、金融知識がある方にしてみれば、ごく当たり前のことをつらつらと書いてあるだけなのでしょうが、普通の価値観を持って、普通の労働者として社会生活を営んできた人には気づきの多い良書だと思います。
「お金をもらうには給料しかない」という固定概念を壊してくれる提案だけでなく、「なんで投資をする必要があるの?」という疑問への答えと、お金のことを考えさせてくれるきっかけになることは間違いありません。
最後あたりは投資の仕方や投資商品の紹介になっていて、"わが子に教えたい"というテーマからは少し外れていたような気もしましたが、子どものいない大人が今からでも読むべき本に仕上がっています。
"これからの世代"の私たちが考えること
この書籍は2015年に発行されており、「現代の親世代が子どもにいかに金融知識を伝えるか」をポイントにして書かれています。ただ、この書籍に出てくる内容はすでに20代、30代である大人たちにも全く無関係なことではありません。
たとえば、「無駄遣いをせずに貯金をしていればお金が貯まると親世代は教えてくれたかもしれませんが、そんなことはありません」と、この本のなかでは、かなり最初のうちにバッサリ否定されています。
それこそ、銀行に預金を預けているだけで金利が8%もあったような親世代の「貯金」と、0.5%の金利ですら高金利と言われるような私たち世代の「貯金」とはまったく意味が違います。
今の時代は、私たちが積極的に金融知識をそなえて投資をしなければ生き残れません。無駄遣いをしないだけでお金がたまったりはしないのです。この点について、著者は以下のように書いています。
私は、「投資」というのは「やった方がよいこと」ではなく、「必要なこと」「欠かせないこと」だと思っています。
(中略)
「インフレ率が2%であれば、年率2パーセント以上でお金を増やすことができなければ、お金が目減りしてしまう」ということ。世の中の多くの人が、このことを実感できていません。
(中略)
お金の価値を目減りさせないためには、インフレ率を上回る速度、せめてインフレ率と同じ速度で、お金を増やさなくてはなりません。
「そろそろ貯金も増やさないといけないかな……」などと20代後半にして"守り"を考えていたところに、改めてハッとさせられました。インフレが起こると「貯金はお金の価値を目減りさせてしまう」という視点はそのぐらい新鮮な視点だったのです。
私は経営者ですが、もともと"貯金よりは投資"という考え方で、事業の拡大を行ってきました。そこに明確な意図はなく、なんとなくお金を増やそうとしていただけにすぎません。
ですが、この本を読んで、改めてなんのために投資をするのかという目標がクリアになったような気がしました。
投資はやったほうがいいことではなく、欠かせないこと。これから年金に最低限の生活保証をしてもらえるわけでもない、親がストック型の貯金を持っているわけでもない平々凡々な私こそ、ガツガツと投資をしたほうがいいのだなと実感させられたのです。
個人事業主や経営者必読の本
また、この本はタイトルでこそ「子どもを持つ親向けの本」であるかのように書かれていますが、個人的には個人事業主や経営者、もしくはそれを志す人であれば必読の本だと思います。
お恥ずかしながら、私はこの本を読んで初めて、株式と債券の意味合いの違いやメリット・デメリットについて知りました。私を代表にするのもなんですが、個人事業主は資本家、もしくはオーナーとしての自覚が足りません。
私の知るオーナーのなかには、決算書の見方すら知らない人もいるぐらいです。
ただ、確かに経営・金融の知識はわかりにくいのも事実で、ネットなんかで調べてみてもなかなかその特徴や違いがつかみにくいことが多々あります。
個人的には、金融の初歩の初歩を紹介してくれる本のなかでは最もわかりやすい本だったと思います。決算書を見るうえで、細かいポイントはともかく、ざっくりとどこを読めばいいか、ニュースなどで他社の経営状態を知るときにどんなキーワードに注目して聞けばいいかなど、非常に参考になる部分がほとんどです。
「個人事業主はオーナーであり資本家である」という自覚を持つためにも、特に金融知識に疎いことを自覚している個人事業主や経営者にはぜひ一読をおすすめします。
私は、この本を読んで改めて経営者として、「現状の売り上げや利益をキープ」するよりも上を上を目指して、やっと世の中の流れについていけるのだなと自覚しました。本当に良書ですので、興味のある方はぜひご一読ください。誇張ではなく、きっとお役に立ちますよ。