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高畑裕太容疑者のわずか4年で幕を閉じる「俳優人生」

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第174回】 2016年8月27日
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 対して強姦致傷罪は、犯行の際、被害者に怪我を負わせる点が加味され、死刑及び無期懲役を含む五年以上三〇年以下の懲役刑が科せられる。被害女性の負傷の度合いによって高畑容疑者の罪状は“強姦罪”に引き下げられる可能性もあり、おそらくは弁護士も強姦罪の適用さらには示談・和解に持ち込もうとするだろうが、強姦致傷罪の場合、執行猶予がつけられることはまずなく、懲役七~八年の“実刑判決”が妥当との見方が強い。

 芸能人の子どもが起こした事件と言えば、三田佳子次男の三度にわたる覚醒剤使用による逮捕や中村雅俊長男の大麻使用による逮捕、みのもんた次男の窃盗事件、元チェッカーズ武内亨長男の大麻所持による逮捕等が記憶に新しいが、そのたびに親が出てきて謝罪会見を開く。

 もちろん、やってはいけないこととはいえ、覚せい剤の所持使用や大麻や窃盗事件を起こしたわが子に成り代わって親が頭を下げ、CMや番組を降板し、しばしの謹慎をすれば世間も多少は大目に見るだろうし芸能界も復帰を許すが、強姦致傷事件を引き起こしたとなると、世間も芸能界もそう容易く高畑容疑者を許すことはしないだろう。

 「うちの裕太クンがとても忙しくしているので、身体が心配です。ちゃんと寝てほしいし、玄関から帰ると三歩くらいでソファに倒れ込んで、死んだように寝て。本当にありがたいです、お仕事いただいてありがたいけど、身体に気をつけて長~くこの仕事を続けてほしいと思っています」

 先月七日のイベントに出席したときの淳子のコメントだ。

 公の場で息子を“クン付け”で呼ぶ淳子にも首を傾げるが、それはさておき、残念ながら高畑容疑者が“長~くこの仕事を続ける”ことはできないだろう。彼女の溺愛する息子は、身勝手な欲望から、蹂躙という卑劣な行為で女性の人生に深い傷跡を残したのだから。

 高畑容疑者は、多くの役者が経験する“下積み”を知らなかった。なりふり構わず母親が営業し、スタッフを口説き回ったから役をもらった高畑裕太は、だから下積み時代の苦労も、仲間が先に売れて行く悔しさも知らないまま、いまに至っているのだろう。経験から滲み出る演技力を持たない俳優に限って、バラエティー番組への露出が増えるのかもしれない。

 “女性を見て欲求を抑えられなかった”のではなく、“演じることへの欲求が抑えられなかった”ら、どれほどよかったか。

 この事件が冤罪だったというどんでん返しでもない限り、十八歳でデビューを飾った高畑容疑者の俳優人生は、わずか四年で終幕を迎える。(文中敬称略)

参考記事:デイリースポーツ8月23日・24日・25日付
スポーツ報知8月23日・24日付他
日刊スポーツ8月24日付

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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