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高畑裕太容疑者のわずか4年で幕を閉じる「俳優人生」

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第174回】 2016年8月27日
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 リオ五輪の感動の余韻も、SMAPの解散も、相模原市で起きた施設での大量殺人事件の続報も、高畑裕太という若手俳優が起こした“強姦致傷”事件が全部吹き飛ばした。

 高畑容疑者は、映画『青の帰り道』という作品の撮影で群馬県前橋市を訪れ、スタッフらと一緒にビジネスホテルに宿泊していたのだそうだ。ビジネスホテルというところに予算の少ない邦画の悲哀を感じるが、高畑容疑者が犯行に及んだのはホテルの女性従業員にだった。

 報道によると、二三日午前二時過ぎ、高畑容疑者はフロントに歯ブラシを持ってくるよう伝えた。そして歯ブラシを持参した女性従業員の手首をつかんで無理やり部屋に連れ込み、性的暴行を加えたとのことだ。

 犯行からおよそ一時間後の午前三時三二分、被害女性の知人男性から一一〇番通報があり、その際、“犯人は高畑裕太だ”と名指しで告げられたという。

 「女性を見て、欲求を抑えきれなかった」

 取り調べの席で、高畑容疑者は犯行動機をこんなふうに説明したとのことだ。計画性はなかったと言っているが、事件数日前からホテルに宿泊し、夜間は女性従業員がひとりで勤務していたことを高畑容疑者は知っていたと見られている。そのため、歯ブラシを持ってきてほしいとの連絡は、女性従業員を呼び出すための“口実”ではないかと疑われてもいる。

 それにしても、この節操のなさはいったい何なのだろう。

 高畑容疑者の事件がオリンピックの感動物語を押しのけ、SMAPの解散報道を追いやったのには、大きく三つの理由がある。

 ひとつは、事件が、若手とはいえ名の売れた芸能人が引き起こした“性犯罪”だったこと。薬物使用疑惑でもメディアは色めき立つが、性犯罪は異質なのだ。

 二つめの理由が、高畑容疑者の母親が紫綬褒章を受章した大物女優の高畑淳子だったこと。

 そして三つめが、今年三十九回目を迎える日本テレビ『24時間テレビ 愛は地球を救う』の“番組パーソナリティー”に高畑容疑者が抜擢されていて、その放映日が容疑者逮捕の四日後に迫っていたことだ。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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