最新記事

地震

イタリア中部、地震活動地帯でも歴史建造物と財政難で対策遅れる

2016年8月28日(日)19時20分

8月24日、イタリア中部は、世界で最も活発な地震活動地帯の1つであり、地震の震動が定期的に同国を貫く山脈を揺らしている。写真は、イタリア中部のペスカーラ・デル・トロントの被災現場を歩く男性。24日撮影(2016年 ロイター/Remo Casilli)

 イタリア中部は、世界で最も活発な地震活動地帯の1つであり、地震の震動が定期的に同国を貫く山脈を揺らしている。

 地震の多くは無視できるほど小さなものであり、何世紀も続くコミュニティーで感じられることはめったにない。電子センサーに記録されるのみだ。しかし、24日に発生した地震では、これまでに250人近くが死亡し、数多くの建物が倒壊した。

 今回のような災害が将来再び起きることは避けられないとみられるなか、イタリアは人命と財産を守るためにもっとやれることがある、と専門家は指摘する。

「イタリアでは、平均して15年に一度、マグニチュード(M)6.3以上の地震が発生してもおかしくない。地震防災と市民保護の文化がもっと促進されていいはずだ」と、イタリアの地質研究所で調査研究を率いるファビオ・トルトリーチ氏は語る。

 米地質調査所(USGS)によると、24日発生の地震はM6.2を記録。震源の深さはわずか10キロメートルで、この浅い深度が破壊力を増幅させた。

「イタリアを貫くアペニン山脈は、地殻変動によって1年間に3ミリ程度、北東と南西の方向に徐々に引っ張られている」と指摘するのは、英国のダラム大学で地球科学の講師を務めるリチャード・ウォルターズ氏だ。

「このゆっくりとした伸張が地殻のひずみを増大させ、今回のような地震で放出されている」

 今回の地震は2009年以来、イタリアで最も被害が甚大な災害となった。同年の地震では、300人以上が死亡し、5万5000人が家を失い、13世紀に築かれた都市ラクイラを破壊した。

 このラクイラ地震は、教会や病院、大学寮など近現代と古代の両方の建物を破壊し、イタリアのインフラのもろさを改めて露呈した。

ニュース速報

ビジネス

ジャクソンホール会合、景気押し上げへ政府の対策必要

ビジネス

マイナス金利下限に「かなり距離」、量・質も緩和余地

ビジネス

米FRB議長「利上げ論拠強まった」、9月の可能性も

ビジネス

米国株はまちまち、FRB当局者の発言受け不安定な値

MAGAZINE

特集:世界が期待するTOKYO

2016-8・30号(8/23発売)

リオ五輪の熱狂は4年後の東京大会へ── 世界は2020年のTOKYOに何を期待するのか

人気ランキング

  • 1

    日本の貧困は「オシャレで携帯も持っている」から見えにくい

  • 2

    中国で性奴隷にされる脱北女性

  • 3

    日本のアフリカ市場出遅れ、問題は企業サイドに

  • 4

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 5

    マイナス金利「量・質とも緩和余地ある」黒田日銀総裁

  • 6

    アメリカ海軍、ペルシャ湾でイラン艦艇に警告射撃 2日連続で異常接近

  • 7

    ハードウェアも電力も使わずに動く、完全にソフトな「タコ型ロボット」

  • 8

    誘拐事件を繰り返し裕福な生活をしていた、アルゼンチン家族の闇

  • 9

    フィリピン、ドゥテルテ大統領就任後の7週間で麻薬絡みの殺人1800件に

  • 10

    芥川賞『コンビニ人間』が描く、人畜無害な病理

  • 1

    フィリピンのドゥテルテ大統領が国連脱退・中国と新国際組織結成を示唆

  • 2

    海保の精神は「正義仁愛」――タジタジの中国政府

  • 3

    中国で性奴隷にされる脱北女性

  • 4

    オリンピック最大の敗者は開催都市

  • 5

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 6

    歯磨きから女性性器切除まで、世界の貧困解決のカギは「女性の自立」にある

  • 7

    NSAの天才ハッカー集団がハッキング被害、官製ハッキングツールが流出

  • 8

    イタリア中部地震、死者少なくとも159人 多くは休暇シーズンの観光客か

  • 9

    イタリア中部地震で37人死亡、市長「生き物の気配がしない」

  • 10

    実情と乖離した日本の「共産主義礼賛」中国研究の破綻

  • 1

    北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

  • 2

    中国衝撃、尖閣漁船衝突

  • 3

    戦死したイスラム系米兵の両親が、トランプに突きつけた「アメリカの本質」

  • 4

    フィリピンのドゥテルテ大統領が国連脱退・中国と新国際組織結成を示唆

  • 5

    日銀は死んだ

  • 6

    【原爆投下】トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味(前編)

  • 7

    海保の精神は「正義仁愛」――タジタジの中国政府

  • 8

    トランプには「吐き気がする」──オランド仏大統領

  • 9

    イチロー3000本安打がアメリカで絶賛される理由

  • 10

    競泳金メダリストの強盗被害は器物損壊をごまかす狂言だった

 日本再発見 「世界で支持される日本式サービス」
 日本再発見 「世界で支持される日本式サービス」
アンケート調査
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

芸人も真っ青? 冗談だらけのトランプ劇場

小幡 績

日銀は死んだ

STORIES ARCHIVE

  • 2016年8月
  • 2016年7月
  • 2016年6月
  • 2016年5月
  • 2016年4月
  • 2016年3月