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JUL/2015

働く女子の「なんとなく不安」は精神論で解決できる? アラサー編集者がお坊さんに相談してみた

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「仕事は順調だけど、一生この仕事を続けていく覚悟まではできていない」、「友達もいるし、結婚も焦っていないけど、このままずっと一人だったらと考えてしまう」……アラサー女性を襲う「なんとなく不安」。姿の見えないこの気持ちの正体を、アラサー編集者のリアルお悩み相談を通して暴く本企画。第二弾の今回、編集者Aが向かったのは、真言宗の僧侶のもと。自ら抱える「なんとなく不安」を赤裸々に相談してみました。

選択肢が増えているのに、選べていないことが不安につながる

働く女子の「なんとなく不安」は精神論で解決できる? アラサー編集者がお坊さんに相談してみた
真言宗 僧侶
心理カウンセラー
羽鳥裕明さん
1968年生まれ。群馬県出身。大学卒業後9年間企業でエンジニアとして働いたあと、31歳で得度して真言宗の僧侶となる。現在、“心理カウンセラー僧侶”として、東京と地元の群馬にて悩み相談の「駆け込み寺」を開設。さまざまな悩みを抱える人たちが早朝から深夜まで次々と相談に訪れる。また、行政機関や企業でのメンタルヘルス相談員、多方面の分野で心の問題についての講演会の講師としても活躍

編集者A:もうすぐ29歳になるんですが、ときどき「このままでいいのか」と不安になります。
でもその理由が分からなくて。恋人がいないのは少し物足りないかもしれませんが、男友達もいるし、一緒に遊んでくれる仲間もいるし、仕事もまあ順調にきています。特に何が欠けているわけではないけれど、逆に「これがやりたい!」というものがあるわけでもない……。

羽鳥さん(以下、羽鳥):自分の敷いたレールを走っているのに、どこか納得しきれていないという感じでしょうか。もしかしたら、少しレールを外れてみたいという思いがあるのかも。

編集者A:確かに、いきなり会社を辞めて旅に出てしまうような人を見ると、あんな突拍子もないことは自分にはできないなと思って、少しうらやましかったりします。職人さんのように、「この道で生きていくんだ」と決めている人への憧れも強くて、でも、どちらにもなれない自分が情けないというか。

羽鳥:現代は選択肢が増えていますからね。昔と違って今は女性の生き方もさまざまですし、特に30歳近くになってくると、結婚・出産して家庭に入った人、仕事に生きると決めた人など、それぞれ違う選択をした人が増えてきます。そこで自分が何も選択していないことに、不安を覚えてしまう。

編集者A:確かに。仲の良い友達が結婚、出産したりすると、すごくうれしい反面、自分と違う人生を歩んでいることが正直さみしかったりもして。でも、彼女たちからすると、私はバリバリ仕事して、毎日充実しているように見えるらしく、そのギャップにも戸惑います。そんなにキャリアウーマンじゃないし、仕事上でも、本当は自信がないことが多くて。例えば、数字なり何らかの客観的な根拠に基づいていれば、「これは違うと思う」「こうしたほうがいい」と意見を言えるんですが、ただ「私はこのデザインが好きだ」とか、好き嫌いについては口に出せない。口をつぐんでしまうんです。

羽鳥:自分の主観を伝えるのは苦手なんですね。これまでずっと相手の要望に合わせてきたところはないでしょうか。「こうしたい」と主張して波風を立てるくらいなら、言わないほうがいい。相手の期待に応えようと自分で頑張り過ぎてしまうのでは?

編集者A:ああー。

羽鳥:もっと言えば、自分の主観を指摘されるのが怖いのかもしれませんね。一般論を主張する分には攻撃されることはありませんが、自分の主観を伝えて「間違っているじゃないか」「あなたのせいでこんなことになったんだ」と言われたくないのかもしれません。

編集者A:言われたくないです(笑)。

羽鳥:好き嫌いは素直に伝えていいんですよ。例えば初対面の人に何が好きかを聞いたときに、「別に……」「何でも……」としか答えてくれなかったら困りますよね。好き嫌いが分かれば、その人がどういう人か分かる。どういう人か分かれば、付き合い方も分かるんです。自分はこういう人だと伝えることは、むしろ相手を楽にしてあげることなんです。

「欲」は本来清らかなもの。自分の欲を知ってほしい

働く女子の「なんとなく不安」は精神論で解決できる? アラサー編集者がお坊さんに相談してみた

編集者A:でも、周囲の期待ではなく、自分はどうしたいかと考えたときに、やりたいことが浮かばないんです。

羽鳥:「周囲の期待に応える自分であらねばならない」という思いが強すぎて、窮屈になっているのではないでしょうか。だって人生を面白くするのは、「正しい」より「楽しい」ですから。
編集者A:「正しい」より「楽しい」。

羽鳥:密教の教えでも「大欲大楽(たいよくたいらく)」つまり「私利私欲の小さな欲でなくて、大きな欲で大きな楽を得よう」という教えがあります。人は、「欲」を原動力にすることを良くないものと捉えがちですが、本来「欲」というのはとても清らかなもので、人々を「楽」しいことに導き人生のバランスを整えてくれます。編集者Aさんは、「楽しい」でなく「正しい」にとらわれてしまっているように見受けられます。「こうあらねばならない」というのは、自分が勝手に作り上げた枠組み、心のクセでしかありません。何より、既成概念を壊していくことが大切だと思いますよ。

編集者A:どうしたら枠組みを壊せますか。

羽鳥:ひとつには、今まで「やりたい」と思いながら何となくやってこなかったことをやってみる。それから、自然が大好きな人が都会で夜遊びをしてみるなど、自分にはまったく縁がないと思っていたことをあえてやってみるのもいいですね。

もうひとつ、私自身もやってみたことですが、「今の自分の世界がすべてではない」ということを自分自身に実体験させるために、毎月違う街に出かけて、その街で暮らしているように時間を過ごしてみるんです。

スーパーで買い物して、定食屋でご飯を食べて、その街の人に会ってその街の空気を感じていくと、「ここで生活する人生もあるんだな」と思うようになる。今とは違う人生の可能性があると理屈ではなく体感として分かると、新しい可能性に目を向けるかもしれないし、その上でやはり今の生活を選ぶかもしれません。何よりも「自分の人生は自分が選んでいるのであって、選ばされているのではない」というように、受動的ではなく能動的に自分の人生を受け止められるようになります。

今とは違う別の人生があると分かるだけで、窮屈さがなくなると思いますよ。

編集者A:確かに視野が広がると、心の余裕も持てそうな気がします。

羽鳥:いきなり自分の心の声を聞けと言われても、意識すればするほど難しいでしょうから、新しいクセをつけて上書きするのがいいと思います。ぜひ、今まで「くだらない」と思っていたことをやってみてください。「くだらない」というのも既成概念ですから、それを壊すんです。何よりも、くだらないことほど、やってみると楽しいものですよ。

ありのままに生きることは 自分も周囲も幸せにする

taidanhidari (1)

コップに水が半分入っているときに、「半分しか入っていない」と見るか、「半分も入っている」と見るか。仏教では、「半分入っている」という事実だけをありのままに見ます。「半分しか」も「半分も」も、どちらも自分の主観で見ていることに変わりありません。人間は、自分が勝手に作り上げた枠組みで物事を捉えてしまう。その枠組みを取り外しましょうというのが、仏教の基本的な姿勢です。

人生の選択肢はたくさんあっても、人は年齢を重ねるにつれ、自分はこんなものだろうと勝手に枠組みを決めてしまいがちです。それに縛られ始めるのが、30歳前後と言えるでしょう。しかし、29歳と30歳の違いも、自分の意識が作り出した幻想に過ぎません。

仏様の悟りの世界を描いた曼荼羅は、それぞれの仏様が、それぞれの場所でそれぞれの役割を果たしていることを表しています。

自分と考え方の違う人や価値観の違う人はいます。しかし、自分がそれに合わせる必要はありません。他の人は他の人の役割があり、自分には自分の役割があるからです。人は、他人と同じであることに一種の安心感を覚えたりもしますが、自分には自分の道があり、それは他の人の道とは違うものであり、本来の自分の道を歩くことでありのままの自分というものが見えてきます。

そして、そうした「自分」を発見することはとても大切なことなのです。

仏教の悟りとは、自分をありのままに知ることです。そのためにも、自分自身が本当に何を望んでいるか。色眼鏡を外して、自分の心を深く見つめていくことが大切になります。

自分の心に素直に生きていくことは、決してわがままではありません。自分が幸せになることであり、自分の利益と他人の利益を同時に満たす「自利利他(じりりた)」を実現することにつながり、この世のバランスを取ることでもあるのです。

 働く女子の「なんとなく不安」は精神論で解決できる? アラサー編集者がお坊さんに相談してみた

【著書紹介】
悩みが消えるお坊さんの言葉

著・羽鳥裕明/出版:サンマーク出版/価格:1,400円(+税)
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取材・文/瀬戸友子 撮影/洞澤 佐智子(CROSSOVER)

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