テレビアニメの業界で定評を獲得しているのがMBS毎日放送だ。同局が手がけたアニメ番組は、首都圏ではキー局のTBSで放送されることが多いのだが、『進撃の巨人』や『血界戦線』のように関西は毎日放送、関東ではMXテレビというケースもある。
そのアニメの編成に長年関わっているのが、丸山博雄・テレビ編成部副部長だ。
MBSのアニメ枠で知られているのが日曜午後5時の「日5」と呼ばれる放送枠だ。この枠は全国放送で、クオリティも非常に高く、放送された作品は毎回大きな話題となる。『マギ』『ハイキュー!』『七つの大罪』、『アルスラーン戦記』『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』などが近年放送されていた。
「日5の枠は、ターゲットを選ばす、大人も子どもも男女も問わず、楽しんで頂ければという想いで送り出しています。アニメのフイルムの質をきっちり重視するという方針なので、制作費のかけ方も朝夕帯のアニメ枠の中ではトップクラスです。
最近のユーザーの方々は本当に目が肥えていて、シナリオや企画性、映像など全ての点に関して、娯楽として質の高いものを求められている。人気の高いマンガのアニメ化などは、ファンの期待が大きい分、送り出す側としても緊張感をもって取り組んでいます」(丸山さん)
この4月からこの「日5」枠で放送されるアニメは『週刊少年ジャンプ』連載の『ヒーローアカデミア』だ。コミックスがまだ7巻(発売日によっては8巻)と比較的新しい作品で、連載が始まってすぐの段階でアニメ化権獲得に動いたケースだという。
「映像化したいと思ったのはわりと初期の段階でした。キャラクター、ストーリー、メッセージ性含めて、作品から発せれる“活力”を感じました。初期の段階で映像化に手をあげられた方は多かったのではないか思います。読者のみなさんや原作サイドの方々にとって、とても大事な作品で、我々映像化するチームもそれをお預りする責任を感じながら、取り組んでいます」(同)
『ヒーローアカデミア』の後には、7月に『アルスラーン戦記』、8月に『七つの大罪』の続編がそれぞれ放送される。人気作品だけに期待されているが、二作品で1クールを形成する放送期間という意味では異例の編成だという。
もうひとつMBSのアニメ枠で知られているのは、金曜・土曜深夜の「アニメイズム」と呼ばれる時間帯だ。今年1月から『亜人』『昭和元禄落語心中』がこの枠で放送されており、4月からは『迷家─マヨイガ─』『マギ シンドバッドの冒険』が放送される。講談社、小学館の人気マンガが原作の作品とオリジナル作品となっている。
特に『亜人』については、昨年以降、やや複雑な展開をしている。
劇場アニメを期間限定で公開、1月に1期をテレビで放送、そして配信展開、という具合だ。このところデジタル技術の発達により、テレビ用の素材を劇場公開で利用することが可能になった。作品としては別物の編集となるが、映画とテレビを連動させながら展開するという方法だ。
「最近は、テレビと劇場、それに配信といろいろな映像視聴の形があるのですが、それぞれ特性があります。劇場ではすぐれた視聴環境で観られるし、配信にはオンデマンド性がある。ただ、まだ知られていない作品とユーザーをつなぐ場として、作品の認知度を高めるという機能はやはりテレビが有効です。配信などは、その作品をすでにきっちり認知し、視聴意欲が高まっている場合には便利と言えます。
マルチユースで、どういう形で映像を視聴できる環境を展開していくかは、作品ごとの特性によってちがうので、製作チームで考えていきます」(同)
配信やDVDを含めて、マンガやアニメのコンテンツ展開は極めて重層的になっている。
MBS毎日放送のアニメ枠「日5」と「アニメイズム」