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第25話 思金神
2082年8月10日(月曜日) 午前8時00分 夏休み終了まで残り23日
意識がはっきりしていく、重い瞼を開けると地球の僕の自室の天井の木目が見える。
少しの間仰向けのまま天井を眺めていると強烈な吐気をもよおしているのに気づく。
この感覚には覚えがある。
昔、時雨先生に無理やり酒をつき合わされて飲まされた次の日だ。簡単に言えば二日酔い。
喉がカラカラだ。水が飲みたい。
ベッドから上半身をノロノロと起こすと、僕の眼前に縦縞の入った仕立てのいい黒色のスーツを着用した男が僕にコップを差し出していた。
男は黒髪をオールバックにし、真ん丸のメガネを掛けおり、一見してサラリーマンのように見えなくもない。
しかしその鷹のような鋭い眼光はよくテレビのドラマで出てくるインテリヤクザを思い出させる。
兎も角だ。この人は誰だろう?
明神学園で、いやこの日本の魔術師の中での僕の立場は最悪だ。何せ日本最大派閥倖月家に逆らった愚かな新米魔術師。それが僕。トチ狂った馬鹿が僕の家を焼き討ちにするくらいの危険性はある。
だからこの屋敷の所在は時雨先生にしか教えていない。そして時雨先生はこの屋敷の場所を他者に漏らすような人ではない。
おまけにこの屋敷の外には次元精霊が警備している。倖月家直属の戦闘部隊でも投入されない限り侵入できるはずもない。
考えていても始まらない。聞くことにしよう
「ありがとう。ところで君は誰?」
僕の問いに男は口角をニィ~と吊り上げる。この反則的に凶悪な表情。まっとうな存在ではあるまい。
まあ状況から考えていくつか想像はつくが、まさかねぇ……。
男はコップを一度ベッドに備え付けられたテーブルに置くと姿勢を正し、右手を胸に当て深く頭を下げる。
「私は思金神です。マスター」
思金神……やっぱり……口調も以前の抑揚のない声ではない。感情溢れる声色だ。もっとも主にマイナス方向の感情ではあるが。
「状況が読み込めない。説明をお願いできる? できる限りわかり易く、簡潔にお願い」
「イエス・マイマスター。
【高次元生命創造術の理】により《高次元生命創造術》の魔術を習得後抽出し、《高次元生命創造術》の性能を分析。
分析した情報をもとに《高次元生命創造術》を中核とした新たなスキルの創造のため、数垓(10の20乗)通りのパターンから最適なスキルの合成を演算。
演算で算出した数万の成分を合成し出来たスキルを《スキル付加》のスキルにより思金神と融合させたスキルが私です」
「す、数万の成分……」
十数個のスキルで《終焉剣武》なんて化け物スキルができたんだ。それが数万の成分を融合? 恐ろしいとかそんなレベルじゃない。
僕の絶句を見て口角をさらに持ち上げながら話を再開する思金神。僕の反応を楽しんでいるのかもしれない。
「私の機能は無数にありますが、大まかに次の3つの機能を御存知になりさえすれば問題はありません。
一つ目の機能――《顕現化》について
《高次元生命創造術》により私はスキルであることを保持しつつ、生命性も獲得いたしました。マスター達の言葉で『精神生命体』とでも言いましょうか」
「『精神生命体』……精霊のような存在と理解すればいい?」
僅かに顔を顰める思金神。今の僕の発言がやや不快だったようだ。
ホント昨日までの機械のような話し方とは雲泥の差だ。今の彼は真の意味で生命体らしい。
「精霊などの下等な生物と断じて同じではありませんが、精神生命体であることは共通します」
プライドの塊のようなスキル。
まあ僕は裸の王様になる気はない。大人しく僕に絶対服従の奴より自身の主張をはっきり言葉にする奴の方が数万倍ましだ。
「話の腰を折って悪かった。話を続けて」
「いえ、不明瞭な点があればいつでもご質問ください。
生命性を獲得した結果私はこのように自在に顕現できるようになったのです。
私はマスターと一心同体。マスターとほぼ同じステータスと考えていただいてよろしいかと」
「っ!? ステータスが同じってことは、君、僕の魔術やスキルが使えるってこと?」
「勿論でございます」
僕の驚愕に溢れた疑問の言葉にニタリと邪悪な笑みを見せる思金神。
今までの純な君はどこにいったの~~?
「ところで《顕現する》の意味が判然としないんだけど、肉体を形成するということ? 顕現中に攻撃されると君が死ぬことはあるの?」
「私の核はマスター核――魂の中にあります。私は自身の核から情報を転写し外界に《顕現》します。言わば《顕現》中の私は核の子供のような存在です。故に子供がいくら滅ぼうと、滅びることはありません。
ただし、転写はかなりの負担でありますので1ヵ月に1回ほどしかすることができません」
「ありがとう。話を進めてよ」
「次が2つ目の機能――魔術・スキルの開発・合成機能についてです。
私は常時マスターと眷属達の魔術・スキルを開発し、それを情報として蓄積しております。私に命じさえすればマスターの欲する魔術・スキルを合成いたします」
「魔術・スキル合成のコントローラーのような機能ってこと?
だけどスキル欄がガチャガチャしていて、もうどこにどんなスキルがあるのかを認識できないんだよね。そのせいでこの頃碌に僕らの魔術欄やスキル欄の確認すらしていないし」
そうなのだ。僕だけでなくステラやアリスの魔術欄・スキル欄にもその影響は波及している。
いつみてもコロコロと所持魔術・スキルが変わるのでバカバカしくなり、最近は魔術欄・スキル欄を除いてステータスを確認している。
今のところステラやアリスが頻繁に使う魔術やスキルは残存していることからさほど問題は生じていなかったが、今後もこれだと僕らの成長が止まってしまう。
「御心配なされる必要はりません。
この指輪をお使いください」
思金神は僕に真紅の指輪を渡す。
「これは?」
「その指輪の名は【神王の指輪】。
今までの指輪の解析能力の委細は製造者の定めたルールにより決められていました。そのルールを最適化し直しました。
具体的にはその指輪で解析できるのはマスターと眷属が現に使用する魔術・スキルだけです。私が毎週日曜の晩に、マスター・眷属と話し合い最適な魔術・スキルを設定させていただきます。
無論、言っていただければ魔術・スキルの随時提供もいたします」
「そりゃあいい。まさに理想的だ」
これなら僕らは扱うスキルを十分に分析し極めることができる。魔術・スキルもその能力を使用者が掌握できなければその効力はないに等しい。
「喜んでいただき恐悦至極にございます。
では説明を続けます。
最適化したルールはいくつもありますが、混乱が必至な変更点だけ申し上げます。
まず魔術とスキルの強度です。
修正前は《一般》、《固有》、《至高》、《混沌》、《虚無》の5段階がありますがこれでは大雑把すぎるきらいがありましたので、1~14の段階に再分割しました。
第1階梯が《一般》、第2階梯が《固有》、第3~5階梯が《至高》、第6~8階梯が《混沌》、《虚無》が9~14階梯までです。
とは言え《一般》、《固有》、《至高》、《混沌》、《虚無》の各段階で劇的な変化をするのも確かですし、一定の価値があります。そこでランクとして以前と同様表記いたします。
魔術・スキルの変更点はこれだけです」
確かに《至高》一つとっても大した力もないものから《進化》のような異常に高性能なスキルもあった。この表記は正直助かる。
「助かるよ。それで?」
「食材、武具、魔術道具については性能の差によりLV1~14までレベルリングしました。
さらに初級、中級、上級、最上級、伝説級、神級、混沌級の6段階を設定しレベルと対応させました。
具体的にはLV1が初級、LV2が中級、LV3が上級、LV4級が最上級、LV5~7が伝説級、LV8~10が神級、LV11~14が混沌級です。
この分類法は魔術・スキルと同様、各等級の段階で劇的な変化をするが故です。
次は回復薬についてです。
地球での回復薬の販売等で必要になると考え次のように整理しました。
まず地球での回復薬の分類法は初級、中級、上級、最上級、特級です。これに神の回復薬製造機の《回復薬LVシステム》の分類法と対応させますと以下のようになります。
LV1~2が低級、LV3が初級、LV4~5が中級、LV6~7上級、LV8~9最上級、LV10が特級、LV11が伝説級、LV12~13が神級、LV14混沌級です。
解析の能力は以上です。ご不明な点は?」
「サンキュー。大丈夫理解した。話を進めて」
「【神王の指輪】と【究極地図】の能力をリンクいたしました。
マスターの持つ【究極地図】からデータは全てロードしアイテム等も移動させましたので今後このタブレット――【神王の地図】を使い操作をしていただきたく思います」
思金神はタブレットを僕に渡し話しを続ける。
「さらに一度訪れた場所の指定は音声・認識入力で可能としました。
具体的には音声で場所を漠然と指定するとその場の映像がイメージとして浮かびます。その後移動を音声で指示し転移先の場所で《転移》と唱えるだけで転移が完了します」
「それは助かるよ。正直タブレットで一々操作するのが億劫だったんだ。
それで?」
「加えまして回復薬は戦闘に必至であるため【神の回復薬製造機】の《製品倉庫》とリンクし、指輪の所持者の意思で自在に引き出せるようにしてあります」
「僕らの個人の持ち物と《妖精の森》の持ち物の区別は? 倉庫が一つだと正直困るんだけど」
「それも対策は立てております。
そのタブレットは常にマスターと眷属達の行動パターンを分析し分配・入庫する能力を有しています。
例えば迷宮内で発見した紅石や、素材、食材は《妖精の森》の倉庫に、個人的に武具・魔術道具・金銭等は個人の倉庫に自動的に入庫されます。
紅石を明後日換金した際にジェリーを【神王の指輪】で入庫させれば自動的にマスター、眷属達、《妖精の森》に配分されます」
「マジで?」
「マジでございます」
「わかったよ。ありがとう。
じゃあ、早速、君が僕に造ってくれた魔術・スキルを教えてよ」
「スキルからです。
《超越進化》、《神王軍化》、《黒星雨》、《無限の盾》、《超越者召喚》と《終焉剣武》を加えた7つです。
これらは《無限の盾》以外全て、《虚無》の第9~11階梯です。第12~14階梯はどうやっても造れませんでした。
第12~14階梯を作成するには核となる魔術やスキルが必要なのかもしれません。
では詳細は解析しながらご説明いたします」
僕は順に解析していく。
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【超越進化】
★説明:必要経験値・スキルポイント50分の1。獲得経験値・スキルポイント100倍。
・《超越進化1・5倍》:全能力値の絶対値1.5倍にする。ただし解析系スキル・魔術・魔術道具で解析しても素の状態で表記される。
★LV1:(0/10000)
★ランク:虚無
★階梯:9
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「最初が【超越進化】です。
色々試しましたが必要経験値・スキルポイントは50分の1よりも性能を上げることはできませんでした。
ですが獲得経験値・スキルポイント100倍と全能力値の絶対値1.5倍の能力の開発には成功しています。
全能力値の絶対値1.5倍は文字通り、筋力、耐久力等の全能力を1.5倍するものですが、混乱防止の観点から解析では素の状態で表記されています。
では次が《神王軍化》です」
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【神王軍化】
★説明:各使徒は神王の《虚無》第9階梯以下の魔術・スキルの7つを使用可能。
・《神王・使徒ネットワーク》:神王を介して使徒同士にネットワークを形成し、情報・取得経験値・取得スキルポイントを共有する。ただし取得経験値・取得スキルポイントの共有は一定範囲の距離にいる者に限られる。
さらに神王と各使徒、使徒同士の情報伝達が可能となり、神王は各使徒を、各使徒は神王と他の使徒を呼び寄せることが可能。
・《神軍化》:他者に印を刻み使徒化する。使徒は自由意思を持つが神王が不利益となる一切の行為が禁止される。
ただし神王は各使徒に対し上記の効果を削除することが可能。また追加で命令遵守の効果を付けることは可能。
使徒の刻印は使徒が自由に不可視化できる。
・《神軍離脱》:使徒化した者から印を取り、使徒の地位を消失させる。
・《眷属軍》:各使徒は他者に印を刻み眷属化することができる。眷属は使徒と同様の恩恵を神王から得る。眷属は自由意思はあるが使徒には逆らえず、使徒は眷属の反逆の意思を察知できる。
★LV1:(0/10000)
★ランク:虚無
★階梯:11
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「【神王軍化】は《眷属軍化》の不都合を可能な限り取り去ったスキルです。
今までは至高までしか使用できなかった魔術・スキルを《虚無》の第9階梯以下まで可能にしました。
私が開発したスキルにより私は眷属の魔術・スキルを融合・消失させることができます。マスターが彼女達に貸し与えたスキルにこの私の融合能力を使うとそのスキルは彼女達のスキルになることが判明しております。この性質を使って私がステラとアリスのスキルを常時進化させています。
ただし彼女達は魔術・スキルをそれぞれ12個以上どうやっても持てないようです」
「僕は無限に近く所持できるみたいだけど、それはなぜ?」
「不明です。マスターの存在としての価値が出鱈目すぎるとしか言いようがありません」
「それって僕が化け物ってこと?」
「…………」
思金神は言葉に詰まってしまう。オブラートに包んではあったが僕を怪物と見なしているのは間違いあるまい。
「まあいいや、話を続けてよ」
化け物か……この際強くなりさえすればなんでもいい。
「《眷属軍》は使徒による眷属化の能力です。使う機会がありましたらその際に説明いたします」
「《神軍化》で《眷属は自由意思を持つものは主人が不利益となる一切の行為が禁止される》とあるけど、これは?」
「マスターが御休みになられてからステラ、アリスと相談しこの制限を入れました。
今後新しく入るギルドメンバーの裏切防止のために必要不可欠であることが理由です」
「……彼女達がそういうなら仕方ないか……」
僕は他者の意思を奪う行為は嫌いだ。たとえ僕に不利益を及ぼさないという単純な制約でもだ。それをすれば僕は倖月家の糞共と変わらなくなるから。
だが僕がここで無理に反対をすれば、それはステラ達の意思を無視するということ。ギルドの重要事項は基本多数決で決めると言ったことを反故にすることになる。
そんなこと、できるはずがない!
「次が《黒星雨》です」
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【黒星雨】
★説明: 天空から漆黒の数多の隕石を召喚し、神速で落下させる。
・《腐化付与》:隕石に強力な腐敗の効果を付与させる。
★LV1:(0/10000)
★ランク:虚無
★階梯:11
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「これは《天体魔術》を元に数十個の強力なスキル・魔術成分を融合してできたものです。
威力は凄まじいの一言ですが、使用はできる限りお控えください」
「なぜ? 使ったらぶっ倒れるとか?」
僕の問いに頭をポリポリとかく思金神。この上なく言い難そうだ。
「……そうではありません。この地球とアリウスの世界自体に対する影響が無視できないからです。
このスキルを使うのは真に追い込まれたときに限って使うのがよろしいかと」
(せ、世界に対する影響って……どんだけ無茶な威力なのよ。
確実に黒魔術のLV7の禁術以上だろうね)
「了解。所謂切り札ってやつね」
「その通りです。
話を続けます。次が《無限の盾》です」
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【無限の盾】
★説明: 自身のLVに15を加えたLV以下のあらゆる物理的・魔術的攻撃を無効化する。
★LV1:(0/10000)
★ランク:混沌
★階梯:7
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「【無限の盾】は物理攻撃と魔術的攻撃を防ぐスキルです。
しかし、状態異常には一切効果がありません」
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【超越者召喚】
★説明:五界から超越者を召喚し使役する。超越者は自由意思を持つが召喚者に絶対服従する。
・《レベル160超越者召喚》: レベル160の超越者を召喚する。
★LV1:(0/10000)
★ランク:虚無
★階梯:10
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「レベル160の超越者を召喚するスキルです。およそ今のマスターの倍以上もの強さの存在を召喚するので、絶対服従条件を付けさせていただきました」
それはそうだ。
レベル160の魔族を召喚し僕らに攻撃してきたら一瞬で挽肉。
僕が死ぬのは自業自得だけど、ステラ達まで巻き添えにするのは愚の骨頂だ。
「了承したよ。
次魔術の説明もお願い」
思金神は僕の言葉に心底ほっとしたように胸を撫で下ろす。
思金神はいくつか勘違いしている。僕はそこまで一途な人間ではない。確かに他者の意思を奪いたくないのは僕の主義だ。だがその主義を貫く大前提は自身や仲間の命に大きな危険がない事。確実に危険があるのに主義を貫くほど頭がお花畑ではない。
「では次が魔術を説明させていただきます。
魔術としてマスターに提案するのは《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》、《終の黒魔術》、《終の白魔術》、《呪術》の4つです。
《終の黒魔術》、《終の白魔術》、《呪術》は低レベルの魔術ではありますが、他の高レベルの魔術は合成しても理論が分からなければ上手く扱うことはできません。
甚だ不本意ですがこれらの弱い魔術を選択させていただきました」
「それでいいよ。
特殊の魔術の理論を一から構築するのは本来一生かけるべきものだ。まあ大抵一生かかっても真理には到達しえないんだけどね。
僕はこの《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》を我が物とすることだけに集中するさ」
「その《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》についていくつかご報告すべき点があります。
まずはこの魔術の使用可能者についてです。
《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》はマスターの核と密接に結びついているらしく、マスターとその分身の私以外のいかなる者にも使用できません。これは《創造魔術|クリエイトマジック》も同じです」
それは端から予想していたことだ。
「だろうね。それで?」
「《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》の製造についてです。
この魔術を開発するにあたり《創造魔術|オールクリエイトマジック》以外にも《錬金工術》、《女王国造成》等の多数の私が開発した生産魔術・スキル等を使って創造されています。
ですが《畜産農業全書》、《伝説の調理王の叡智全書》、《神の建築学全書》はマスターの許可を頂いておりませんでしたのでこの融合には使われてはおりません。
つまり――」
「まだ先がある。そういうことだね?」
思金神は顔を歓喜で歪ませる。
思金神のこの表情。悪戯を思いついた幼い子供のようだ。
「《万物創造魔術|オールクリエイトマジック》の使い方は今までとほぼ同じです。
コントローラー役は私がしますので造りたいものがありましたらお声をおかけください。
これで私からの報告は終了です」
僕は二日酔いのごときむかつきを振り払うようにベッドに備え付けられたテーブルに置かれたコップを握り一気に飲み干す。
数回深呼吸すると落ち着いてきた。
「魔術・スキルの開発と説明ご苦労様。
それはそうと、君のスキルの階梯は?」
最後に確認したい。
元々混沌級のLV6のスキルに核となる《高次元生命創造》と数万の最良の成分を合成したスキルを付加したのだ。
完成するスキルなど容易に想像できる。
思金神は厳かに右腕を胸に当てて姿勢を正し――。
「当然、虚無――14階梯でございます」
口角を三日月状に吊り上げながら僕の予想通りの言葉を紡いだ。
お読みいただきありがとうございます。
お待たせしました。次からが地球編です。26話は地球での計画立案。そして27話からが実際の地球で起こす行動となります。
ここからは、ギルドゲームにナンバーズゲーム、アリウスの帝国戦などてんてこもりになります。ご期待いただければ幸いです。
最後にこれほど大勢の方々が読んでいただき感謝に耐えません。どうもありがとうございます。
階梯の表記と魔術の記載が誤っていたので修正しました。申し訳ありません。
+注意+
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