カエルくん(以下カエル)
「いや〜!! 『君の名は』すっごく面白かったよね!!」
ブログ主(以下主)
「…………」
カエル「なんというかさ! これまでの新海誠の全てが詰まった、集大成みたいな作品だよね!!」
主「…………」
カエル「……あ、これシン・ゴジラの時と同じで、一気に爆発するパターンかな?」
主「フフフ……フフフフフフ。
だから言っただろう? 『君の名は』は新海誠の代表作になる、日本アニメ至上屈指の名作になるってさ。いや、わかっていたよ? これだけ愛情深く、新海誠に注目してきたファンとしては、まあ当然の結果だよねぇ」
カエル「……うわぁ、マジで気持ち悪いわ」
主「まあ、なんていうの? 新海誠の才能と、ここ最近のCMなどの作品を見れば、これだけの作品ができるっていうことは……」
カエル「はい、感想スタート!!
ちなみに、感想は言っていくけれど、今回は予告編以上のネタバレはありません!!」
『君の名は』の公開前に書いた記事です
ネタバレありのガッツリ評論がいい方はこちら
1 全体の感想
カエル「それじゃあ、改めて聞くけれど、全体の感想としてはどうだった?」
主「新海誠の集大成であり、これから先、代表作といわれる作品だよね。
今までの作品は秒速にしろ、言の葉にしろいい作品だけど、人を選ぶところがあったじゃない? 『童貞くさい』とかさ『男が女々しい』とか、『感情移入できない』とか、『女がステレオタイプ』とかさ。絶賛する人はするけれど、その人にとって魅力と思われたところが、人によっては全然ダメだったりするわけだ」
カエル「賛否の分かれる監督だったからね」
主「だけど今作に限ってはそんなことなくて、大人から子供も、男も女も関係なく楽しめるエンタメになっている。
予告編でもあるけれど、今作は男と女が入れ替わるんだよね。今までの作品も男と女の話だったけれど、今回はどちらかに感情移入したり、気に入れば大丈夫。どちらのキャラクターもアニメ的だし、そこまで大きな違和感はないし」
カエル「新海監督特有のポエム調のセリフは?」
主「全くの0じゃないけれど、だいぶ抑えられている。というか、全体のテイストが明るめでドラマ的だから、そんなにポエムも目立たない。
今回はギャグパートもしっかりと入っているし、笑い声も聞こえるような作品に仕上がっている。
これで新海誠は一躍トップアニメ監督になるかもしれないね。
あ、あとRADファンも必見の出来だね。RADの PVという意見が出るほどに、重要な扱いをされているから」
2 スタッフの話
主「あんまりアニメに深く興味のない人にはちんぷんかんぷんかもしれないけれど、スタッフの話をしようと思う」
カエル「スタッフってアニメーターとかそういうことだね」
プロデューサー 川村元気について
主「今回プロデューサーで川村元気という人がいるんだけど、この人がまあやり手でさ。『電車男』とか、『告白』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』の企画やプロデュースをしてきた人なわけ。これから公開の作品も『怒り』をプロデュースしているし、まあすごいヒット作連発をしている人なわけだ。
さらに自分で小説を書いて『世界から猫が消えたなら』を4年で累計100万部売って、映画化もしちゃったような人」
カエル「テレビアニメだと『血界戦線』もヒットさせたよね」
主「……これに関しては原作ファンだから、むしろ熱血系の原作をオシャレにしたという点において非難したいんだけど、とにかくヒットさせることに関しては天才的な嗅覚を持つ人でもある。上記の映画作品の評価自体もそんなに悪くない、まあ経歴と実績がのせいで嫉妬しかないけれど。
今作においても監督が『RADのファンです』って言ったら、その場ですぐに交渉して、起用することになったというくらい行動力のある人だよね」
カエル「そんな人がプロデュースをしているから、大きく外すことはないだろうってことだね」
作画監督 安藤雅司について
主「本作の作画監督は安藤雅司なんだけど、この人の名前は知らなくても作画監督作品の代表作を聞けば誰もがわかるすごい人」
カエル「へえ、何を作った人?」
主「『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『東京ゴッドファーザーズ』『パプリカ』とかの作画監督。原画ならまだまだ出てくるよ。『イノセンス』とか『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』とか。
作画監督の仕事は作画部門のトップだからさ、野球でいったらコーチでもリーダー格だから、ヘッドコーチかな? 一般には目立たないけれど相当大切なポジション」
カエル「え!? どれも日本を代表する作品じゃない!!」
主「そうよ。『星を追う子ども』がジブリっぽいというけれど、今回は本当にジブリを背負った人が作画監督をしているわけ。だから、作画面に関しては相当レベルの高いことをしている」
キャラクターデザイン 田中将賀
主「で、このキャラクターデザイン田中将賀も相当にすごい人でね、こちらも代表作をあげていこうか?」
カエル「代表作を聞かないとわからないからね」
主「分かりやすいところでは『とらドラ!』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』とか。これらは長井龍雪と岡田麿里のトリオとして有名で、キャラクターデザインと総作画監督をしている。
オタク的に注目するのは『交響詩篇エウレカセブン』『蟲師』とか『甲鉄城のカバネリ』の作画監督をしていた人。特に作画がすごいと褒められた作品だよね」
カエル「……こっちもまたすごい代表作ばかりだね」
主「ここ最近ヒットしたアニメの作画ばかりだし、間違いない腕を持つ人だよね。もしかしたら、『ここさけっぽいな』という印象を持つかもしれないけれど、キャラクターデザインが同じ人だから、当然といえば当然。
ここまでは事前にクレジットされていたことだけど、今回エンドクレジットを見たら、さらにすごい発見があったんだよ」
アニメーターがすごい!
カエル「アニメーターってそんなに馴染みがないけれど、そんなにすごい人がいるの?」
主「自分もそんなに詳しい方ではないけれど、それでも知っているレベルの人がいるわけよ。
例えば、作画監督に黄瀬和哉がいた。エヴァのTV版、映画版とか『機動警察パトレイバー 劇場版 』の1、2両方、『イノセンス』も作画監督も務めた大ベテラン。押井さんの懐刀の一人だよね。
そんな人が作画監督にいたのよ。だから、宮崎駿のジブリテイストもあれば、押井守のIGテイストもあるというと、すごさがわかりやすいかな?」
カエル「え!? そんなにすごい人たちが集まっているの!?」
主「さらにいうと、原画に沖浦啓之という……一般の人には馴染みがないけれど『人狼 JIN-ROH』と言う作画クオリティが高い作品の監督をして、『イノセンス』などで大事なシーンを任された日本でもトップクラスのアニメーターが参加している。
他にも765メンバーのアイドルマスターのアニメ(通称アニマス)の監督を務めた錦織敦史がいてさ、流れるスタッフロールを見ただけだから、もっとすごい人を見逃しているかもしれない。
レビューを見ると業界内評価の非常に高いベテランの松本憲生、『ルパン三世 カリオストロの城』にてルパン大跳躍を描いた田中敦子も参加していたという話もある。
宮崎駿やジブリイズムがあり、押井守の懐刀がいて、近年の深夜アニメの名作画を監督した人がいる。
まさにオールスターなわけだ」
3 キャストについて
カエル「じゃあ、ここで濃いスタッフの話は一度置いて、声優の話に入ろうか。まずは主演の神木隆之介についてはどうだった?」
主「多分、なんだかんだ言われるだろうけれど、悪くないよ。今回は難しい役どころだと思うんだよね、何せ男でありながら女も演じなければいけないっていうさ。しかも、オカマ演技になっちゃいけないんだよ、中身は女の子だから。
そういう難しい部分もしっかりとこなしていたし、個人的にはあんまり文句ないかな? あと、声質が新海監督の好きそうな朴訥とした感じで良かったよ」
カエル「相手役の上白石萌音はどうだった?」
主「よかったよ。こっちも色々と言われると思うけれど、今回オーディションで選ばれたと聞いたけれど、声質がいいなぁって思った。
この子って映画の『ちはやふる』に奏役で出ていた子でしょ? その思いがあったのか、所々茅野愛衣みたいな声質だなぁって思いながら観ていたね。
じゃあ茅野愛衣でいいじゃんって言いたくなるのもわかるけれど、経験を積めばすごくいい声優になるんじゃないかな?」
カエル「そして長澤まさみだけど……」
主「すごくよかったよ。セクシーで影のあるお姉さんだったし、声質が透明感があって本当に綺麗でさ、いわゆる『アニメ声優』の演技ではないけれど、それがまた独特の美しさを醸し出していたね。
あれ、長澤まさみってこんなにうまかったの? と思っちゃったぐらい良かった」
カエル「他の声優陣は?」
主「今回、個性的なベテラン声優って……いないんだよね。『雲のむこう、約束の場所』のレビューの時も書いたけれど、芸能人声優の中に石塚運昇がいてさ、プロの声優の中でも個性的な声質で、うまい役者じゃない? そんな人と並べられたら、そりゃ浮くし、下手に聞こえるよってのはある。
だけど、今回は若手中心で声質も独特な人も少なかったし、演技も自然だったから芸能人声優と本職の声優での差がそこまでなかったように思う。いい采配だね」
カエル「その中でも目立ったのは……やっぱり悠木碧かなぁ?」
主「出ずっぱりと言うほど出番があるわけでもないんだけど、やっぱり悠木碧はうまいなぁって感心した。25歳以下では早見沙織と並んでトップクラスだと思う。この世代はやっぱりすごい上手い人ばかりで驚くよ。
あとは特に大きく演技で印象に残る人はいないかなぁ……そうそう、子役の谷花音も良かったよ。個人的に子役は嫌いだけど、そこまで気にならなかったかなぁ。まだ小学生でしょ? この歳でこれだけできればすごいよね」
4 見所紹介
カエル「じゃあ、ネタバレにならない程度に見所などの感想をあげていこうか。やっぱり絵の美しさはあるよね」
主「それもあるんだけど、今回は人物の動きに注目してほしいかな。特に、入れ替わった後の男の子(瀧)の動き。
骨格やキャラデザは男なのに、動きが女の子という難しいところをしっかりと描けているんだよね。
特にベットで寝転がる、話としては何でもないシーンがあるんだけど、そこの体の動かし方……特に足の動かし方がすごく柔らかくて、良かったよ」
カエル「今回はリアルテイストの動きというよりも、『キャラクター』という動きになっていたんじゃないかなぁ?」
主「顔の崩し方だったり、表情表現というものが素晴らしかったね。今までの新海作品が苦手という人にも受け入れられるかもしれない。
逆に、あのリアルテイストを望んだら『あれ?』ってなるかも。個人的にはどっちでもいいけれどね」
カエル「絵というと、やっぱり風景描写が良かった。新宿とかの都会表現と、あの田舎の山の表現が別の美しさを持っていたね」
主「見慣れた都会もここまで美しく描くかぁと驚いたけれど、山などの木々の美しさも良かったよ。さすがは新海誠って印象がある。
あと、1か所腰抜かすような表現をしている部分があるから、そこは見て欲しい」
音楽と絵の融合
カエル「ここは新海誠がすごく上手い部分だよね」
主「元々アニメは音楽と絵が合わさった時に、大きな快感が生まれるものでさ、例えばディズニーアニメは絶対に歌が入ってミュージカルパートがあるでしょ。
あとは映画「けいおん!」とか『劇場版 響け!ユーフォニアム』とか、『アイドルマスター シンデレラガールズ』などのアイマス系や『ラブライブ!』に、『心が叫びたがってるんだ。』なんかを見ても、歌と絵が合わさった時の感動というのがどれだけ大きいか解る。
演奏シーンやダンスシーンがなくても、バッチリと音楽と絵が合わさるとそういう感動があるもんでさ」
カエル「そういえば、過去の新海作品も『秒速』と言い『言の葉』と言い、ラストで音楽と絵があった時の相乗効果で一気に感動したね」
主「そう。『音楽が名曲なだけ』という人もいるけれど、その名曲に負けないような映像を作ることができているというわけだ。
新海誠はそれがうまいから、今回も心配しなくていい。それが好き嫌いはあるにしろ、RADと組み合わさることで相乗効果は大きいよ」
脚本について
主「これに関してはネタバレが大きくなりそうだから難しいなぁ」
カエル「じゃあ、簡単に語ってみようか」
主「詳しくはネタバレありの記事で書くとして……過去の新海作品と比べて、すごく大きく成長したなって思わせてくれるし、誰にでも届くものになったと思う。
突っ込みどころもだいぶ無くなったね。秒速とかは致命的な欠点があったわけじゃない、どことは言わないけれど。それがなくなったから、だいぶ面白いよ」
カエル「じゃあ、この先はネタバレありの評論記事にしようか」
ネタバレありの評論記事はこちら
(上にあげたのと同じです)
最後に
カエル「さて、これでネタバレなしの感想記事を書き上げたわけだけど……どうだろうね? レビューにはなったかな?」
主「この記事は試写会を見たあとに書いているんだよね。さすがに公開前には上げることができないから、少し時間を置いてから書いているけれど、多分見終わった直後に書いていたらもっと熱量がこもったと思う。
良くも悪くも冷却期間ができて良かったね。試写会で見たけれど、当然のように映画館でも見に行くよ」
カエル「さて、それじゃあ、次はネタバレありの評論記事だよね。この感想記事も相当に長いけれど、評論記事はもっと長くなるだろなぁ」
主「語りたいことが多すぎるんだよ。これまでの新海誠と、これからの新海誠の分岐点になる作品だからさ、どうしても長くなる」
カエル「そちらもこの後(夕方6時くらい)に公開予定なので、楽しみにしていてね!」
新海誠の他作品のレビューはここにまとめています
ユリイカ 2016年9月号 特集=新海誠 ―『ほしのこえ』から『君の名は。』へ
- 作者: 新海誠,神木隆之介,RADWIMPS,丹治匠,中田健太郎
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2016/08/27
- メディア: ムック
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