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【社説】

三反園知事 真価は秋に試される

 原発推進の現職を破り、先月鹿児島県知事に初当選した三反園訓(みたぞのさとし)氏が、公約通り川内原発の一時停止を九州電力に要請した。住民の安全本位をこのまま貫徹できるかどうか。日本中が注視している。

 「県民の不安は高まっている」と、三反園知事は言う。

 震度7級の激しい揺れが頻発した熊本地震は、地震学の常識さえ揺さぶり、覆す衝撃だった。

 日本は地震国。原発に不安を感じているのは鹿児島県民だけではない。一時停止、再点検を求めた知事の背中を押しているのは、「国民」に違いない。

 二十五日、福島第一原発の“メルトダウン隠し”の謝罪に訪れた東電幹部に、泉田裕彦新潟県知事は「真実を明らかにし、事故を総括してほしい」と要請した。

 たとえ地元で十分な避難計画が策定されたとしても、福島の事故は終わっていない。

 福島の事故原因が明らかになり、被災者の補償を含む事故処理が終了し、放射能に故郷を追われた人々が無事帰還できるまで、多くの国民が共有する再稼働への不安はぬぐえない。

 3・11ですべては変わった。そして熊本地震で、変革の必要性は高まった。県民や国民の安全が最優先だと言うならば、一時停止、安全再検討の要請は、現段階では立地県の知事として当然の判断に違いない。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は「われわれがきちんと審査してきた原発の何を点検するのか」と、三反園知事の方針に疑問を投げかけた。

 しかし、規制委の審査は「安全を保証するものではない」と田中氏自身が明言しているではないか。それなのに、政府の方針転換に従って、原発事業者は再稼働を急ぎ、中立であるはずの規制委も、それに沿うかのようにも映る。

 このような状況下で「再点検が必要ない」という方が無責任ではないのだろうか。

 九電が要請に従う見込みはなく、稼働中の原発を止める法的な権限は知事にもない。しかし、定期検査などで停止した原発の再稼働に際しては「地元同意」を取り付けるのが通例で、知事には影響力がある。知事の同意のないままで再稼働させた例はない。

 川内原発1号機は十月、2号機は十二月、約二カ月間の定期検査に入る予定だ。

 三反園知事が掲げた住民本位、安全本位。真価はその時表れる。

 

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