生まれたばかりの赤ちゃんを抱っこするときは顔を横に向けてあげて、お母さんは体を起こす――。出産直後のベッドで母親が赤ちゃんを抱く「早期母子接触」の間に赤ちゃんの体調が急変し、脳性まひになる例があることを踏まえ、日本医療機能評価機構(東京)が予防のためのリーフレットを作成し、注意を呼び掛けている。
リーフレットは「妊産婦用」と「産科医療関係者用」の2種類で、7月下旬から医療機関や自治体などへ送付。いずれも子供を抱く際には(1)赤ちゃんの顔が母親からよく見える位置で実施する(2)母親の上体を30度前後まで起こす(3)赤ちゃんの顔を横に向ける――などと解説している。
医療機関には、早期母子接触で子供の体調が変化する恐れがあることなどを、妊娠中から母親や家族に説明し、その上で希望するか確認することも求めている。
機構は、出産事故で子供が重い脳性まひになった際に、一時金などが支払われる産科医療補償制度を運営し、事故の原因分析を通じて再発防止策も提言。昨年末までに分析を終えた793件のうち、早期母子接触中に赤ちゃんの体調が急変し、脳性まひになったケースは7件あった。
具体的には毛布を掛けて抱いていたら心肺が停止し、低酸素性虚血性脳症で脳性まひになった例があり、誤嚥(ごえん)で気道がふさがったり、呼吸がしっかりできない状態だったりしたことなどが考えられる。
早期母子接触は、以前は「カンガルーケア」などとも呼ばれ、母子の心身の安定につながるとされている。子供の呼吸や血糖値が安定するとの研究結果もあり、多くの医療機関などが取り入れている。一方、子供の体調が急変して障害が残ったとして、訴訟となる例もある。〔共同〕