2016年8月27日土曜日

『君の名は。』感想:こんなすごい映画作るなんて本当に新海さんは大したものですね。

 もう『泣ける』とか・・・そんな単純な言葉では表現できないですよ。そりゃあ、声出して泣きましたけどね。でもね、新海監督がやってくれたんですよ・・・新海作品の良さを全く失わずに、これほどのエンターテイメント作品を作りあげたことへの感動ですよ!映画『君の名は。』を初日に見た感想です。

君の名は。」予告2より画像引用(東宝MOVIEチャンネル)
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(C)2016「君の名は。」製作委員会
※以下ネタバレありのレビュー&考察となりますのでご了承ください。

期待と不安を持って劇場へ


 自分の大切にしてるアニメ作品を3つ挙げろと言われたら迷わず『秒速5センチメートル』を入れてしまう自分にとって、新海誠監督がメジャーになっていく姿は嬉しくもある反面、不安もあったんですよね。

 新海監督の作品って作家性がかなり強いじゃないですか。熱狂的に支持するファンがいる反面、結構人を選ぶというか。今回はこれまでにない大規模公開で、万人向けのメジャーな作品に挑戦することは、独特の新海カラーを薄めてしまうんじゃないだろうか・・・なんて思って。

 そんな期待と不安の中、先行発表された小説『君の名は。』も、あえて未読のまっさらな状態で劇場へ行ってきたのです。

序盤の終わりに傑作を確信!


 冒頭の美しい彗星のシーン・・・今考えるとすごいシーンなんだけど綺麗でしたね。その後のタイトルからのオープニングアニメ。最近の劇場版アニメはOPは省略することが多いからちょっとびっくりしました。普通のアニメ作品みたいで逆に新鮮ですね。

田中将賀さんのキャラクターデザインは素晴らしいの一言
メジャー作品にふさわしい洗練されたデザイン
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 チラシの文字まで緻密に書き込まれている映像や、カットの一つ一つが絵になる背景は、新海作品らしく全く期待を裏切らない素晴らしいものでした。序盤は予告編通りのテンポの良い進行で、田中将賀さんのキャラクターデザインは本当に馴染みやすくグッとメジャー感を感じます。

 そして序盤も終わりにさしかかり、この後どう展開していくのか・・・と思っていた30分過ぎ。まさかのミュージックビデオ的な場面の展開!新海作品の予告編が超大好物な自分としては、この楽曲とセリフが重なる演出が本当に大好きなんです。

予告編通りにこのシーンが見られるとは思わず感激した
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 もうこの時点で『やってくれた・・・新海さん・・・やってくれた!』って感激で目頭が熱くなってきました。製作陣も分かってくれてるんだ、この良さを、新海さんの予告編の素晴らしさを分かってくれてるんだ!って本当に嬉しくなって、この作品はもう間違いない・・・傑作に違いない・・・と確信した瞬間でした。

クライマックスからの盛り上げに嗚咽


 そして後半。あの、現実が明らかになるシーン。空気が一変するような本当に鮮やかな場面の転換。ゾクゾクっとした感動で・・・ネタバレなしで見たので本当に圧倒されました

 ラストはどうまとめてくるのか・・・新海監督ならどんなエンディングでもあり得るだけに本当に気が抜けない展開でしたね。『頼む・・・今回ばかりはキツいのはちょっと・・・』と祈るような思いでした(笑)

ラストをどうまとめてくるのか
直前まで予想がつかずに祈るように見た
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 クライマックスを分散するように感動ポイントを仕込み、気持ちも分散するかと思いきや、実は階段を上るように着実に感情を揺さぶってきます。今考えるとホントうまいよねぇ。

 だからラストの電車のシーンの前あたりで、もうすでに感極まってしまい(笑)相当やばい感じに。『これで再会できなかったらこの涙をどうしてくれよう!』と思っていたところで、一旦ちょっと引いて『えっ?』と思わせてからの一声・・・・これもう本当にタメに溜めに溜めきった末での感動で・・・新海さんサービス良すぎ(笑) 

 あまりに涙が出すぎて何度も嗚咽を漏らしてしまったじゃないですかぁ!『はっはぅぅ・・・』っていいトシして恥ずかしいわい!(周りの人も泣いてたけどね)正直その前後のシーンは記憶が定かでは無くなっちゃて・・・再度見て確認するしかないね。

 ホント、エンディングの前半は涙ですぎてほとんど目が開けられませんでしたよ。黒バックのシンプルなEDであそこまで泣かされるなんて・・・ラストシーンの余韻を思い返すだけで止まらなくなるんですよね。でも本当に気持ち良かった!

新海さんのサービスを堪能できた


 全く期待を裏切らず全力で期待に応えてくれる、これが新海さんの作るメジャー作品なのか・・・と圧倒されました。そうしたら鑑賞後にみたインタビュー記事をよんで笑ってしまうと同時に納得してしまいました。
『観客に「楽しかった」と思ってもらえるような、サービスを尽くした作品をもう1~2本、長い映画を作らなければいけないと、今は思っています』
「君の名は。」が1分たりとも退屈させない秘密 - 東洋経済ONLINE より

 ああ、これが新海さんのサービスなんだ・・・これまでの作品以上に、観客を楽しませるために全力でサービスしてくれたんだなぁ。だったら観客である自分は小賢しいこと考えずに全力で楽しむのが正しいんだよなぁって安心しました。

どうして相手は瀧くんだったのか?


 ストレートで理解しやすいとはいえ、考察したくなるところもたくさんある作品でしたね。(小説やパンフは未読なのでそちらには書いてあるのかもしれないけど、違ってたらゴメンね)

 一番に気になったのは、どうして三葉の入れ替わり相手が瀧くんだったのか?あれは一葉おばあちゃんが言っていた昔話の、大火のキッカケとなった何とかという人・・・きっとあの時に火を出したという彼が瀧くんとなんらかの繋がりがある人なんじゃないかな?

 だとしたら、三葉のお母さんやおばあちゃんも、瀧くんのお父さんやおじいちゃんと入れ替わってたのかな・・・その当時は入れ替わったとしても天災は起きないんだから意味のない不思議現象なんだけど。

意味は失われても組紐のように『入れ替わり』は継承されていった
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 でも宮水家は次の天災に備えて、その入れ替わり現象を代々続けていたのかもしれませんね。一葉おばあちゃんが言ったように、その『意味は失われて』も組紐のように繋いでいったものなのかもしれないなぁ・・・その失われる前の記録も知りたいですね。

 楽曲の『前前前世』じゃないけど、きっと世代を超えて共鳴し合っているんだろうなと。そういう話し大好きだなぁ・・・そういえば、町長になったお父さんも、もしかしたらこの天災に備えて導かれたのかもしれませんね。自分で選んでいるようでいて、結局運命だったりするんですよね。

子役の演技にびっくり!


 今回、役者中心の声優でしたけど違和感はなくてすごくいい演技でしたね。役者さんの声優だと、どうしても素の印象が強くなったりしますが、声を聞いて顔が浮かんだのは市原悦子さんくらいで、長澤まさみさんもいい感じで溶け込んでいましたね。

市原悦子さんはキャラ自体を再現しているので顔が浮かんで当然
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 瀧くん役の神木隆之介くんは安心できるというか本当うまいですよね。この作品の雰囲気というか新海さんの作風に語り口があってる気がしたな。

 ヒロインの三葉役の上白石萌音さんは18歳なんだってね。役者っぽさというか良い意味で声優的じゃない感じが良かったと思う。あと、三葉の同級生『克彦』は、モデル出身の成田凌くんが意外と言っては何だけど、すごくキャラにあった演技でよかったですね。

 有名声優の悠木碧さんは、逆に目立たずすごく自然に役に溶け込んでいて、やっぱすごいやぁって感心してしまった。

妹の四葉は本物の子役が演技していたと聞いてびっくり
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 もう一人注目だったのは、妹の『四葉』の役者さん。本物の子役(12歳)の谷花音さんがやってると知ってビックリ。すっごい力のある子役キャラで、ちょっと癖のある声なので絶対声優さんかと思ったよ!まじか!

一貫した新海作品のテーマ


 今回の作品が発表されて、東映の拡大上映とかどんどんスケールの大きい話になってて『ヒエェ〜大丈夫なの?』って1ファンに過ぎない自分が心配になっちゃうくらいで・・・大勢の人に期待されるという重圧というか辛さって相当なものじゃないかなぁと思ってました。

 凡庸な自分の頭では、ほかにどんなネタがあるのかまるで思いつかないし(笑)、予告編を見る限りは、男女入れ替わりもので・・・なんか一見ありふれた話のようで。マンネリ化とかしちゃってるのかな?って。

 でも実際に見てみれば、マンネリとは逆に一貫して繰り返しテーマを追求したうえで、セカイ系現実のラブストーリーという、これまでの作品の枠組み自体を融合させて、映像もストーリーも、最新の日本アニメとしてふさわしい作品に仕上がっていました。

セカイ系を超えた2016年にふさわしいポスト・セカイ系と言いたい作品
(C)2016「君の名は。」製作委員会

 しかも『新海作品らしさ』はしっかり保ったままでこれを成し遂げたんだから本当にすごいですね。『人と人との心のつながり』という普遍的なテーマ

 自分が大学生だった頃、羨望の眼差しで見た初期作『ほしのこえ』から連綿とそのテーマを紡ぎ続ける新海作品。あの時・・・14年後にこんなすごい作品を見せられる事になるなんて想像もしてなかったけど、本当に素晴らしかったです!ありがとうと感謝したくなる作品でした。

『君の名は。』公式サイト
http://www.kiminona.com/index.html

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