元慰安婦に1000万円 財団支出で合意
遺族には200万円 月内にも財団に10億円を拠出へ
岸田文雄外相は24日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と外務省で会談した。昨年末の両国の合意に基づき、月内にも韓国が設立した財団に日本政府が10億円を拠出する方針を伝えた。両氏は10億円の使途について、財団が元慰安婦の生存者1人につき1億ウォン(約1000万円)程度、死亡者(遺族)には1人につき2000万ウォン(約200万円)程度の現金を支出する支援を実施することで合意した。
昨年末時点で生存していた元慰安婦は46人で、死亡した元慰安婦は199人。支出総額は計85億8000万ウォン(約8億5800万円)に上る見通しだ。日本政府は賠償金ではないとしているが、10億円の拠出金のうち8割以上が元慰安婦らに現金で支給されることになる。
支出にあたっては、財団が元慰安婦らの個別の需要を把握。日韓が合意した使途の範囲内で現金で支払う。医療・介護、葬儀関係費用、親族の奨学金などを想定している。日本政府は生存者への支出額が多くなった理由について、医療・介護費用が含まれるためと説明している。
このほかに、元慰安婦の名誉・尊厳の回復と心の傷の癒やしに向け、合同慰霊祭などの事業を実施する方針。財団は元慰安婦や遺族らに支出金の使途を聞き取り調査するほか、両政府に事業の実施状況を定期的に通知する。
財団への拠出の手続きが進んだことを受け、日本政府は韓国側に対し、ソウルの日本大使館前にある慰安婦を象徴する少女像を移転するよう働きかけを強める方針だ。菅義偉官房長官は24日の記者会見で「日本政府による資金の支出が完了すれば、日韓合意に基づく日本側の責務は果たしたことになる」と強調した。岸田氏は会談で日本が24日に財団への10億円拠出を閣議決定したことを伝えた上で、少女像について「問題の適切な解決のための努力を求める」と述べた。
両外相は、北朝鮮の核・ミサイル開発についても協議。米国を交えた3カ国の連携強化を改めて確認し、南シナ海問題で国際社会のルールに基づく行動の重要性でも一致した。岸田氏は韓国国会議員団が島根県・竹島に上陸したことに抗議した。【田所柳子】