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 「息を吹きかけてください」。8月中旬、北欧・デンマークの首都コペンハーゲン郊外。幹線道路に立った警察官はアルコール検知器を手に、通りかかった車に停止を求めた。

 アルコールを検知すれば「POS」(陽性)、しなければ「NEG」(陰性)と表示される。この日、10分間で止めた4台の車に飲酒運転はなかった。

 デンマークは長年、飲酒運転による事故に対峙(たいじ)してきた国だ。人口は570万人。1人当たりの飲酒量は世界でも上位で、国家警察によると交通事故の死者の2割は飲酒運転が原因だ。

 2005年には、悪質な交通違反者から車を没収する仕組みを導入。3年以内に飲酒運転を含め3回の重大な違反があれば、所有する全ての車を没収する。14年には、悪質な飲酒運転者を対象に、基準値の4倍に当たる呼気1リットル中1ミリグラム以上のアルコール検出で、初犯でも没収する改正案が議会を通過した。

 没収した車は委託先の民間業者がオークションにかけ、売却益は国庫に入る。没収される車は年間数百台に上るという。

 交通・建設省で交通法規を担当するジョイ・クラウセン氏によると、没収された人から「厳しすぎるのではないか」と抗議の電話が入ることもあるが、「飲酒運転で人が亡くなることはあってはならないし、その恐れも低く抑えなければならない。そのためには『没収』という手段も致し方ない、というのが国民的な共通認識」と話す。

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