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 ハンドルの横に据え付けられた、スマートフォン大の黒い装置。電源を入れて待つこと20秒。マウスピースから4秒間、息を吹き込むと、「アルコール数値が検出されました」と女性の声が流れた。車のキーを何度回しても、エンジンはかからない。

 車に取り付けて飲酒運転を未然に防ぐ「アルコールインターロック」装置だ。日本では電子機器メーカーの東海電子(静岡県富士市)が2009年に商品化した。設置費を含め1台約15万円。運送業者を中心に約2千台が売れた。

 大手電機メーカーの下請けだった東海電子が開発に乗り出したのは、杉本一成社長が事故に関する報道を見たのがきっかけだった。

 東京都世田谷区の東名高速で1999年11月、酒酔い運転の大型トラックが乗用車に追突し、幼い姉妹2人が焼死した。運転手はサービスエリアで休憩中、ウイスキーや焼酎を飲んでいた。「飲酒運転によって突然、平和が崩れ去ることは許しがたい」と杉本社長。据え置き型の測定器から開発を始め、海外で先行していた車に装着するタイプへと発展させた。

 インターロックは06年8月に起きた福岡・海の中道大橋の事故後にも飲酒運転根絶の切り札として注目された。

 国土交通省は事故を受けて交通政策の専門家らによる検討会を設け、すべての車に装着を義務付けるかどうかの議論を進めた。だが「安価で簡易に使え、精度の高い装置がまだない」として、標準装備することや義務付けといった提言には至らなかった。内閣府も08年から飲酒運転対策の調査を始め、有識者の検討会などを開いた。10年3月の報告書は「自主的な活用を促進することが適当」との表現にとどまった。

 自動車メーカーでつくる日本自動車工業会の渥美文治・飲酒運転防止技術分科会長も「一部の悪質なドライバー対策のために一般ユーザーの負担が増えることになり、社会の理解が必要」と慎重な姿勢だ。

■米、違反者に装着義務化

 一方、国交省などによると飲酒…

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