昔々、ちょっと昔。
お金を使うことが大好きなペンギンがいました。
彼は俗にいう”意識高い系”のペンギンです。
イタリアンなスーツに身を包み
ハンドメイドなシューズの踵を鳴らし
オートマチックな腕時計を光らせる
ペチペチと足で稼ぐ営業用の装備。それは給料丸2ヶ月分ほどの高価な装備です。
彼は自己投資も大好きでした。
自分が挑戦したいことであれば、先行投資も惜しみません。
副業のセミナーがあれば出席し
共同制作の音楽アルバム1000枚分の費用を出し
好きな女性のためにと六本木ヒルズに繰り出します
氷しか無い田舎から大都会にやってきた彼には、この街は誘惑だらけです。
そうしているうちにお金が足りなくなったペンギンは、ギャンブルをするようになります。
ですが、ジリジリと焼けたような頭でギャンブルをしても、あっという間に残り少ないお金もなくなってしまうのでした。
そんな夏のある日、渋谷の電光掲示板から聞こえてきた声に、彼はふと顔を上げます。
そこには500円玉3枚を手に乗せた森田さんの姿がありました。
『10万円借りても月の利息はたったこれだけ』
そう、それは天からの声だったのです。
ピンときたペンギンは、暑さしのぎにもなるかなと、誰もいない広めの電話ボックスのような箱型の建物に吸い込まれていきます。
そして40分ほどして出てきた彼の手には、さっきまで持っていなかった10万円が握りしめられていたのです。
そう、神様は彼に魔法のカードをプレゼントしてくれたのでした。
それからというもの、彼はスーツを新調し、これまで以上に夜の池袋に繰り出し、仕事中にもギャンブルをするようになりました。
当然お金は氷が溶けるように減っていきますが、ペンギンはもうお金の心配なんてしていません。
そう、彼には神様から貰った魔法のカードがあるのですから…
1年後。
ある事情で収入が減ってしまったペンギンは、神様にお金を返すばかりで氷しか噛じれないような状態です。
3年後。
田舎に帰ったペンギンは、親ペンギンの世話になりながら割のいい仕事を見つけ、神様への返済を続けています。
7年後。
紆余曲折ありながらも、ようやく神様へ献上金つきの返済を終えたペンギンは、独り静かに魔法のカードにハサミをいれました。
輝きをすっかり失ってしまった、魔法だと思っていたカードに…
10年後。
現在ペンギンは神様にも魔法にも頼らずに生活しています。
彼は今幸せです。
ペンギンはお金を使った瞬間に得られる気持ちに価値を感じなくなりました。
もちろん、お金を引き換えに得られる素晴らしい体験には、彼は今でも魅力を感じています。
ですが、ペンギンは気づいたのです。
自分に無いものばかりに目を向けていると、自分が持っていないものばかりが輝いて見えるということに。
そして、持っていないものの輝きに目が眩むと、今の自分にある素晴らしいものにさえ、気がつかなくなるということにも。
それは、輝きを失った魔法のカードが教えてくれたことでした。
彼は今ではすっかり自分がペンギンだということを思い出し、あんなにひもじいように感じていた氷を、美味しそうに嬉しそうに嚙じるのでした。
当たり前ですよね。
だって彼はペンギンなんですから。
高価な服や都会の暮らしは、ペンギンには合わなかったのかもしれませんね。
⇒楽園カードのお申し込みはこちら
おしまいっ!
(この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。)