内閣府は26日、世界経済の現状に関する報告書「世界経済の潮流」を公表した。中国経済について政府主導のインフラ投資が活発になっていることに懸念を示した。民間の固定資産投資が減っている一方、国有企業の投資は急増している現状を分析。将来的に不良債権に計上されるリスクのある要注意債権の残高が増えていることにも触れ、過剰設備・債務に対するリスクも指摘した。
報告書によると、2016年に入ってから国有企業の固定資産投資が急増し始めた。15年は前年比10%前後の伸びで推移していたが、16年4月以降は20%台と、伸び率が急激に高まった。一方で、15年前半に10%台で推移した民間企業の投資は徐々に減速し、16年に入ってからは1桁台の伸び率にとどまっている。
内閣府は中国の銀行が貸し倒れに備えて用意する準備金残高がどの程度不良債権をカバーできるかも試算した。中国が公表する不良債権残高は16年4~6月期で1兆3900億元(約21兆円)。中国の銀行は16年3月時点で2兆4000億元の準備金を計上しており、十分補える状態だ。
だが不良債権に計上される1つ前の段階である要注意債権に着目すると様相が変わる。要注意債権の残高は右肩上がりで膨らみ、16年4~6月期には2年前の約2倍に相当する3兆2000億元まで増えた。要注意債権も含むと、債権に対する準備金の比率は53%にとどまる。債権を準備金で賄えず、金融不安リスクが高まる可能性がある。内閣府は「景気が減速するなかで、要注意債権の不良債権化に注意が必要だ」と指摘した。
報告書では、6月に英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた影響についても分析した。14~15年の英国の実質経済成長率の約3分の1は外国人労働者数の増加によるもので「英経済がグローバル化のメリットを最大限に生かしながら成長してきた」(内閣府)と分析。EU離脱で外国人労働者の流入が制限されれば、英経済の成長が滞る可能性を示唆した。